ライフスタイル

【#1】サンキュー、太陽

2022年3月13日

text & photo: mei ehara
edit: Yukako Kazuno

最近ほんの少しだけれど暖かくなってきて嬉しい。花粉症の人々には憂鬱なシーズンかもしれないけれど、私にとってはこの暖かさ、パーッと何かが開けて明るくなるのような春の暖かさを感じると、どんどん活発になれそうな気がしてきて本当に気分が良い。春生まれだしね。うちの猫も家の中で暖かいのが嬉しいようで、一番暖かい場所をみつけて眠っている。私も猫にひっついて便乗で堪能する。戦争のことやコロナのこと、胸が苦しくなるようなことが多い。暖かいだけでほんの少し救われる。

ベッドの上でくつろぐ猫

圧倒的に春が好きなんだけれど、30代に入ってから夏を好きだと思うようになった。あちいあちいと文句垂れながら、夏の暑さをイベントとして楽しんでいるところがある。冷たい飲み物が美味しいし、コンビニに入れば涼しくて両手広げて喜んじゃう。もう冬は、ごめんなさい。動けません。
去年の夏は坂本慎太郎さんやKid FresinoさんのMV制作に参加していて、もうとにかくサバイバルみたいな暑さだったけれど、むしろ気持ち良いと思う場面がたくさんあった。周りの人に「夏にジーンズを履いているのはおかしい」と言われても、ジーンズを履くのも良かった。子供の頃から夏が苦手で、20代まで冬の方が断然良いと思っていたんだけど。同い年の友人もそーだそーだと言っていた。久しぶりに友人と会うと決まって季節のことや天候のこと、日が延びた今日は前回会った時よりもっと延びたとかそんな話ばっかししている。

6〜7年前、知人のバンド1983のアーティスト写真を築地で撮影した。その日はとてつもない暑さで、熱中症をはじめて体験した。まさか自分が熱中症になったとは思わない。どうして気持ち悪いのかが全くわからなくて、「ちょっとあっち、いい感じか見てくるね〜」なんて言ってひとりで路地に入っては吐き、「なんも無かったー」と笑顔でサムズアップして戻った。こそこそ路地で着替えて出勤するスパイダーマンみたいに何度も、身体の中がすっからかんになるまで吐いて、とにかく今日の撮影を無駄にしてはならないという気合いだけで、朦朧とする意識をなんとか保って見事撮影をやりきった。だめだよ、そんなことしちゃあ。
「打ち上げとして、寿司行きますか!」と誘われたけれどもちろん断って、面々と別れた後すぐに耐えられなくなってぶっ倒れ救急車で運ばれた。撮影助手をしてくれていた親友のおかげで。病院で目が覚めた時なぜか二人とも大爆笑していた記憶があるんだけど、あれはなんだったの?
前日から早く眠って体調も万全だと思えたし、水分補給もしっかりしていたから、一体何を引き金に熱中症になったのか、わからなかった。熱中症そういうものなのかも。注意したいですね。
そんなことがあって、ただ暑いからとか日に焼けるからとかだけじゃなく、熱中症が恐ろしくて夏が嫌いだったのが、今では夏が好き。まあ秋の方が好きだから三番目にだけど。しかし、本当にどうでもいい話だ。
今年はこれまで通りとはいかなかったフェスなどのイベントも元通りを目指していくようだし、私も4月のカクバリズム20周年イベントを皮切りに、ほぼ二年ぶりのライブが何本か決まっている。私のバンドメンバーや事務所の人にも会えるし、やりたいこともたくさんある。痩せもしたい。みんなが好きな季節を楽しんで、平和に過ごせる未来を心から願いたい。戦争反対。

プロフィール

mei ehara

えはら・めい|1991年、愛知県出身のシンガーソングライター。学生時代に宅録を開始する。2017年にキセルの辻村豪文プロデュースによる1stアルバム「Sway」を発表しカクバリズムからデビュー。翌2018年に「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演を果たした。2020年4月に7inchアナログ「昼間から夜」、5月にセルフプロデュースした2ndアルバム「Ampersands」をCDと12inchアナログでリリース。また音楽活動の傍ら文藝誌「園」の主宰を務めており、王舟、藤森純(The Buffettment Group / 東京スプラウト法律事務所)と立ち上げたインタビュープロジェクト「DONCAMATIQ」や、他アーティストの写真撮影やデザイン制作などにも携わる。

Official Website
http://eharamei.com/