ライフスタイル

【#1】数珠繋ぎ日記

執筆: 曽我部恵一

2022年2月15日

text: Keiichi Sokabe
edit: Yukako kazuno

終わりのことを考えるようになった。
昨年、父が亡くなって以降、「ああ、オレもそのうち死ぬんだなぁ」と、ぼんやり思う。怖かったり悲しかったりはないが、心配なことはいくつかある。

そのひとつが、各種契約やアプリなどのパスワードのこと。
ぼくが急に死んで、「パパのパスワードがわからない!」と残された家族が焦ると申し訳ない。しかし、あらゆるパスワードをプリントアウトして、部屋の壁のだれもが見えるところに常に貼っておく、なんてこともあまりしたくはない。無用心だし。クレジットカードから漫画サイトまで。仕事柄、音楽制作ソフトなども多い。パスワードがすべてわかったとしても、解約は面倒だと思う。ちょっぴり恥ずかしいサイトの解約もあるかもしれない。申し訳ない。今のうちに謝っておきたい。

もうひとつは、所有する大量のアナログレコードのこと。もちろんぼくが死んだらすべて中古レコード店に売却してもらいたい。なかには超がつくほどのレア盤も少なくないから、まとまった金額にはなるんじゃないだろうか。
そこで注意し始めたことが、レコードのジャケットや盤面の綺麗さを保つことだ。
今までは、文字通り「擦り切れるほど」聴いて、ジャケットも盤も擦れたり汚れたり傷ついたりして、そんなことが「味だ」と思っていたのだが、最近は「汚れると買取価格、下がるな…」などと考え、レア盤は保護袋に入れたりするようになった。

ザ・クラッシュのファーストなど、子供の頃からずっと聴いていて、それなりに汚れてるだろうレコードは、ヒマを見て洗浄したりする。洗ってピカピカになったレコードは、音も一段と綺麗に鳴る。パチパチというスクラッチノイズもクリアで気持ちいい。
終わりのことを考えながらも、綺麗になったレコードの音に耳をかたむけながら目を細めている。我ながら、なかなか成仏しそうにない奴である。

プロフィール

曽我部恵一

そかべ・けいいち | 1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。’90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。’70年代の日本のフォーク/ロックを’90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。

http://www.sokabekeiichi.com