カルチャー
【#4】自ら踊る
2022年2月2日
text: Yukimaru Kumaki
edit: Toromatsu
前回、感情はその人のオリジナルであるという話をしました。オリジナルの感情にフィットして救ってくれる表現は限られているから、そうした表現に出会うためにもたくさんの表現が世の中に溢れていて欲しい、という話でした。
しかし実際に数多ある表現の中から自分にフィットする表現を探してみると、簡単には見つからないことに気付きます。膨大にあるモノの中から出逢うことができた幸運な方でも、時間と経験で脳が変化し、フィット感がズレていってしまうこともあります。繊細ですね我ら。
どうすれば、自分にフィットする表現と出逢い続けることができるでしょうか。カバンの中、机の中、向かいのホーム、路地裏の窓、そんなところにいるはずもないのに…。とてもシンプルな提案をします。自分で表現すれば良いのです。自分の中にある感情をそのまま好きな形に昇華すればいいのです。
いやいや草です。自分にはそんな才能はありません。と思う方もいるかもしれません。まぁ聞いてください。私は、何かを表現する能力が誰しもに備わっていると考えています。絵や歌や踊り。私たちは幼少時、何を気にするでもなく表現をしてきたのではないでしょうか。それに普段ツイートをしたり写真をアップしたり、実は私たちは日常的に表現をしています。
社会性を育む過程、例えば学校教育などで「一定の基準の中で評価されること」を学ぶようになります。その中で、個人的で自由な振る舞いを制限するようになります。社会の基準の中で意義がないものを自分の行動内から排除するようになります。
「才能がありません」と心配する方は「社会的に評価されるものを作れない」不安を意味しているんじゃないかと思います。しかし、自分の感情が社会的に評価される必要はありません。別に人よりうまくやれなくていいんです。家で料理を作っている時に、ミシュランの名店より美味くできなくて凹むわ~なんて考えなくていいでしょ?表現することも同じです。
大人であっても、感情は波のように絶えずあらわれては毎日を揺らしているはずです。表現はそういった感情を乗りこなすために個人的に行われるものです。人に見せる必要はないのです。自分のために表現すればそれで十分なのです。1曲丸々作詞作曲編曲します、となるとそれだけ技術が必要になります。
しかし、たった1行、1音のみだったらできる気がしませんか? 裏垢で愚痴をこぼすように、ノートに1行書く。将来への不安を、シンセ1音で表現する。これだけでも立派な表現なんです。小さな表現かもしれませんが、自分にとって光になります。「あぁもっと自分にフィットする表現ができるようになりたいなぁ」と追い求めるようになるのも良いと思います。それも大事な光です。
私たちは、波のように無限にやってくる感情を脳の中に溜め込んでいきます。感情を排水するのを我慢し行き場を無くして頭の中に溜まり続け、ときに窒息しそうになります。排水すれば感情が独立して踊り出し脳は少し軽くなります。自分にフィットした表現と出逢うこともそうですが何より、自分自身で表現することが感情に適した姿と行き場を与えてくれるのです。また、それらを自分が外側から見つめることで、新しい自分の姿に邂逅することもできるはずです。
何でも良い。絵、音、文、食事、花、映像、フォローフォロワーのいないSNSアカウントでつぶやく。何でも良いのです。是非、感情を形にしてみてください。私も音楽をつくる人間として、自分の内側を音で表現したいと考えている人のために、いつも楽曲制作で行う過程の様子を短く動画にしてみました。
22、23、31。それぞれ私が「未来に対して漠然とした不安と高揚感」を強く感じた年齢です。こういう不安を感じているからこそ音楽として昇華しなければと強く思ったのを覚えています。そのことを思い出してラフスケッチしてみました。
4回に渡り、日々自分が思っていることを発信させていただきました。みなさんの毎日へのヒントになっていれば嬉しいです。そして、Lucky Kilimanjaroは今年の春に“TOUGH PLAY”というアルバム作品をリリースします。タフに遊んで踊りたい自分とみなさんのためのアルバムです。良ければチェックしてみてください!
ありがとうございました!またお会いできる日まで、ナイスグルーヴ!
プロフィール
熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)
くまき・ゆきまる | 埼玉県生まれ。“世界中の毎日をおどらせる”をスローガンに掲げる6人組バンド、ラッキーキリマンジャロのフロントマン。Hey! Say! JUMPやDISH//に歌詞・楽曲提供も行う。2022年にはパシフィコ横浜をファイナルとした全国ツアーも始動。
HP
http://luckykilimanjaro.net/
Twitter
https://twitter.com/yukimaru_lk
Spotify
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