TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
CULTURE

【#3】私は彼女と同棲している。

2021.06.26(Sat)

私は彼女と同棲している、始めて半年程だ。こんな見た目なのに彼女いるのかよ、というような声にはもう慣れた。いるよ、こんな見た目でも彼女いるよ。

 同棲というと一緒に物件を探したりして計画的に始まったように聞こえる。しかし実際は一度上がり込んだら住み着いてしまったという野良猫だったらギリギリ許されるような成り行きで始まった。ご飯も毎日出してもらっているので、我輩はほぼ猫である。よく毛も抜ける。

 同棲をしていることを話すと「私は無理だな~」とか言ってくるやつがいるけど、同棲なんて皆無理だよ。無理して皆してるんだよ。合わない生活リズム、家事の分担などなど付き合いたてにはあるはずのない問題がいくつも浮上する。化粧品が出しっぱなしとか、服を脱ぎ散らかしたままとか、おしっこを立ってするとか、それはもう様々な理由で互いにイライラがたまっていく。

 私は食事を作業だと思っている節がある。黙々とご飯を食べて、お腹が一杯になれば良い。そして食事中に喋るというのがあんまり得意じゃない。家族と仲が悪かったために食卓で話す文化が根付いていない、という言い訳でなんとなく自分自身を落ち着かせている。

 同棲を始めて3ヶ月ほどたったある日、私は夜の10時頃に帰宅した。彼女はすでに仕事から帰ってきており、調理を終え、一人で食事も済ませていた。彼女が夕飯を温めて食卓に並べてくれるまで、私はベッドでゴロゴロしていた。我輩はほぼ猫である。 並べられた食事を私は無言で食べ始め、無言のまま食べ終わった。手を洗おうと洗面所に行くと、地べたの隅に小さくまとまった彼女が泣いていた。私は、あぁ、仕事で嫌なことあったのかな、と思った。何にも気が付けずに、自分にはまるで非がないと思って慰めようしていた。そこで彼女に伝えられるまで無言でご飯を食べていることすら気が付いていなかった。彼女からすると美味しいでもまずいでも良いから何か感想が聞きたかったらしい。

 伝えられたからと言って変えられるところもあれば、変えられないところもあって、それを無理に変えようとせず、あなたはこういう生き物なのね、仕方ないね、でもここだけは絶対に変えてね、というすり合わせが幾度もなされて同棲は成り立っているように思う。相手を気遣って多少の無理をしながら生活するのが同棲というものなんだと思う。大きな不満がなくても小さなわだかまりを沢山抱えて、それでも仲が良いというのが健やかな同棲なのかなと今は考えている。 
  ちなみに、先程私はパソコンで作業している彼女とキーボードの間に割って入ってじゃれたりしていた。我輩は完全に猫である。

プロフィール

ニシダ

1994年生まれ。お笑いコンビ、ラランドのツッコミ担当。3月に設立した個人事務所『レモンジャム』社員。ウェブサイト『note』でコラムを執筆中。

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