カルチャー
【#1】ミドリカワ君との事
2021年6月9日
text : Makoto Kobayashi
其の一
シャイな性格だけど、エネルギッシュ。おっちょこちょいで、ちょっと天邪鬼。世の中には、そんな人が時々いるもんだ。僕の友人に(緑川卓)という人が居る。彼は当にそんな感じの人物だ。いつ会っても、明るくてニコニコしている。そう、彼は優しい人なのだ。但し其れは彼のほんの一面なのだろう。中国、雲南省のミャオ族のプリミティブな民族衣装、1950年代のマクレガーのスウィングトップ、二十世紀初頭のネイティヴアメリカンのフリンジ付きビーズベスト、イヴ・サンローランのモンドリアンミニドレス、アザラシの毛皮のエスキモーパーカー、セディショナリーシリーズのパラシュートシャツやモヘアのセーター、あらゆるサープラスやワークウエアなど、数え出したらキリが無い。気が遠くなるほどに様々な時代の表現様式の異なる衣服達を蒐集して其れらを解体分析し研究しながら再構築し、魂を吹き込んで世の中に還元させて行く魔術的表現者、要するにファッションデザイナーであり、マニアックな人でもあるのだ。
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彼に対しては様々な評価があるが、其れは、あまり意味の無い後付けであって、本人は、ただ好きな事を続けているだけだけなのである。彼の頭の中には驚異の部屋と呼ばれるデザインする為だけに使われる場所があり、日常生活下では封印されているが、内部には混沌とした渦巻くエネルギーの塊が閉じ込められていて、一度解放して、タブーを解いてしまうと濃厚で果てしない幻想の宇宙をさ迷い続ける事になり、彼は簡単には現実の世界に後戻りできなくなってしまう。その様に長い幻想の旅の果てで産み出された様々な物達は作品などと言うよりも彼の分身と呼んだ方が良さそうだ。『今夜の夕飯は何にしようか?』今日も彼は相変わらず恥ずかしそうにニコニコと微笑んでいる。
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プロフィール
小林眞
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