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【#4】ネコ研究者のポートランド – SF旅行記

執筆: 服部円

2023年8月31日

photo & text: Madoka Hattori
edit: Yukako Kazuno

前回に引き続き、サンフランシスコにある科学博物館『Exploratorium(エクスプロラトリウム)』のレポート後編です。前編では常設の体験型展示を紹介しましたが、今回は展示空間の中央に設置された特別企画展について説明させていただきます。

『Exploratorium』では、常設の他に、企画展として企業やアーティストと協業した企画が展示されています。私が訪れた7月は2つの企画展が開催されていました。

ひとつめは企画展「¡Plantásticas!」という植物にフォーカスした企画展です(2023年9月まで)。ロサンゼルスのアーティスト、アンディ・ソックによる植物を使ったインスタレーションやラテン系先住民族がもつ植物の知識を活用したポップでサイケデリックなグラフィックが素敵でした。単に植物を並べて観察するのではなく、すりつぶしたり匂いをかいだり、食やガーデニングなど人の営みから科学的に観察することの面白さを体験できました。

ふたつめは動物の研究をしている身としても大変気になっていた、自然界に存在する音を視覚化したインスタレーション「The Great Animal Orchestra」です(2023年10月まで)。こちらはカルティエ現代美術財団との共催でした。

もともとは、アメリカ人音楽家で生態音響学者であるバーニー・クラウスによる同タイトルの著書をきっかけに、2016年にパリのカルティエ現代美術財団で展覧会が開催され、蔡國強や杉本博司なども参加していたようです。

今回展示されていたのは、バーニー・クラウスが中央アフリカやアメリカ、ジンバブエなどで7箇所で録音した15,000種にもおよぶ動物たちの音を、イギリスのアーティスト集団ユナイテッド・ビジュアル・アーティスツ(UVA)がサウンドインスタレーションとして制作した作品です。

展示空間の冒頭には音として登場する動物たちについての説明がありました。またいくつかの動物は絶滅危惧種に指定されており、生態系の保全活動について学べるパネルも展示されていました。

会場に入ると、真っ暗な箱の中にはいくつものソファーが置かれており、観客はソファーや床に寝転び、映画を観るようなリラックスした体勢で体験することができます。デジタルな光とともに森の中にいるような木々が揺れ、風邪で葉が擦れる音、チンパンジーや鳥、昆虫などさまざまな動物の音が聞こえてきます。光で音を視覚化することにより、実際に動物たちが目の前にいるような感覚がやってきました。

一見、ノイズに聞こえるようなさまざまな生き物たちの音を聞いているうちに、人が生み出した複雑な楽譜と同じように編まれていることに気付かされます。まさにオーケストラのような壮大な音楽の世界に浸ることができました。自然がこんなに豊かな音を鳴らしているとは驚きです。音だけですがこちらでも聴くことができます。ぜひ体験してみてください。

最後は、博物館や美術館を訪れたなら必ずチェックしたいミュージアムショップのお話です。館内にある小さめなショップと入場外エリアにある大きめなショップの2箇所あります。科学やテクノロジーに関する書籍やガジェット、工作キット、おもちゃなどが販売されていました。目をひいたのが細胞のキャラクターのぬいぐるみ。あのウィルスをキャラクターにしてしまうとは、なかなかシュールです。

またお土産にベストなのが、シンプルなロゴを配したオリジナルグッズです。Tシャツやキャップもサイズが豊富にありました。さらに、視覚的にも美しいオプアートが、マグカップやステッカーなどにも使われています。レンチキュラーで楽しめる丸いステッカーは友人へのお土産に大人買いしました。シンプルなデザインのTシャツやキャップもありました。 

今回は、学会がメインの旅だったため、観光する時間はほぼありませんでしたが、ポートランドとサンフランシスコという同じアメリカの西海岸でありながら全く違う雰囲気の街並みを体験することができました。

ちなみに学会は毎年会場が変わります。昨年のABS学会はコスタリカで開催、来年はロンドンを予定しているとか。来年も行けるといいなと思いつつ、まずは目の前の論文を書き上げることに集中したいと思います。

インフォメーション

Exploratorium
◯Pier 15 (Embarcadero at Green Street) San Francisco, CA 94111 月休 入場料大人39.95ドル 木曜限定で18時から入れるナイトチケットあり、企画展は時期により変化

プロフィール

服部円

はっとり・まどか | 編集者、大学院生。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業後、ファッション誌の編集者として働く。現在、京都大学野生動物研究センターの博士後期課程に在籍し、ネコとヒトとの関係について研究している。2023年5月にカルチャーとサイエンスを繋ぐWEBメディア『文化と生物学』をローンチした。

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