デビュー作の邦訳版が再販されたのを機に、京都に招かれたフランス人作家のシドニをめぐる、仏映画版ロスト・イン・トランスレーション。寡黙な編集者の溝口健三と親密な時間を過ごすなか、彼女は亡くなった夫の亡霊と出会うが……。外国人監督的ないかにもな日本描写はさておき、溝口健三という名前から想起せざるをえない溝口健二的な幽霊(実際、劇中では彼に対して「有名な監督の子孫?」みたいなやりとりがある)、鈴木清順的な過剰な桜
、黒沢清的な車中スクリーンプロセスなどなど、随所に日本映画へのオマージュを感じさせつつ、しっとりと落とすその手腕には息をのんだ。12月13日より公開。