ライフスタイル

【#2】 友達紹介

2021年7月19日

photo & text: Ran Tondabayashi
edit: Yu Kokubu

浅草で一人暮らしをしていた25歳の時に、OLをやりながら絵を描き始めました。その当時はひと回り歳の離れた大人たちと遊ぶことが多く、仲の良い同世代の友達は今思うとそんなに多くありませんでした。

「とんだ林蘭」という名前をもらってからあっというまに9年が経ち、その間に長く暮らした浅草から引っ越したり、フリーランスになったりと環境が変化しました。いつの間にか、同世代の友達もたくさん出来ました。今周りにいる友達たちは知れば知るほど変でおもしろくて明るくて、自分はなんて常識にとらわれている人間なんだろうと、いつも思わせられる存在です。一緒にいると楽しいので、すぐ、会いたくなってしまいます。

その友達の中でも、こんなにおもしろい人がいるんですとつい人によく話してしまう、ちょっかんさんというあだ名の人がいます。

まず、何をしている人なのか説明するのが難しい人です。出会った時に自分で燻製をしたホワイトチョコレートやチーズケーキを振舞ってくれたこともあり、初めは燻製をやっている人という認識でした。

どうやって燻製するんだ?というものを燻製してみたり、燻製について書いた紙のジンを燻製してそのジンをジップロックに閉じ込めて売ったりと、実験的なアイディアを試すのが好きで、何をするにも一筋縄ではいかない、人がやっていないことを見つけてやる人、という印象は出会ってから今までずっと変わりません。

出会って少し経った頃、私の展示のアフターパーティでカラオケ大会をやった時、ちょっかんさんが濱田理恵さんの「笑顔に会いたい」を歌い、ママレード・ボーイが好きな私はテンションが上がってしまい話が盛り上がり、それをきっかけに徐々に仲良くなりました。ちょっかんさんはシルクスクリーンも出来る人で、私の個人的なグッズやポスター作品を作ってもらったり、撮影の小道具に文字やイラストを印刷してもらったりと、ここ数年で一緒によく仕事や制作をする関係にもなりました。版の作り方も自己流に近く、作業を見ていると工夫の天才で、この人は無人島に流れ着いても生き延びるだろうなぁといつも思います。

かなり版数の多いめんどくさいプリントや、私がシルクスクリーンを良く理解していないがゆえに思いついてしまった提案も、おもしろがって引き受けてくれます。大変な思いをさせてしまったことも度々ありますが、普通だったら笑われたりする様なアイディアも、活き活きした目でおもしろいねと言ってくれる人です。

一緒に制作したシルクスクリーンのポスター
私物の靴にシルクスクリーンプリントしてもらったシリーズ

燻製とシルクスクリーンに加えて、今のちょっかんさんを語るにははずせない事がもうひとつあります。彼は3年半ほど前から、急にStone IslandとC.P.Companyの昔の洋服にハマり、すごい量を集め始めました。最近はブランドの本国から声がかかり、C.P.Companyの50周年のアニバーサリーブックに登場したり洋服を貸し出したりと、気がついたらアーカイブコレクターになっていました。

下心なく純粋な衝動で始めたことは、本人にとっても周りにとっても良いハプニングを生むし、素直に好きを突き詰めるのは良いことだなとちょっかんさんの行動を見ていて思います。

そんな色々なことが結果的に仕事になっているちょっかんさんのすごいところは、平日の昼間はそれらとは関係のない仕事をしているところです。

きっとシルクスクリーンだけでも生活していけるだろうというくらいの依頼が来ているのに、昼の仕事は辞めないの?と聞くと、好きでやっていることはお金を気にせず自由におもしろさを優先してやりたいからと言っていて、ますますちょっかんさんの事が好きになりました。

私はOLを辞めて、思い切ってフリーランスになってよかったなと思っていますが、ちょっかんさんのような生活の仕方も理想のひとつだなと思います。思考と実験を止めないちょっかんさんは、いつか何かを発明するんじゃないかなと私は密かに思っています。

プロフィール

とんだ林 蘭

1987年生まれ。東京を拠点に活動。イラスト、ペインティング、コラージュ、立体、映像などの手法で作品を制作。CDジャケットや広告のアートディレクションも行う。名付け親はレキシ(池田貴史)。