カルチャー

さーて、8月はどんな展示に行こうかな。

全国各地、夏休みに行きたい展示4選。

2023年8月8日

ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室
@DIC川村記念美術館

イェール大学で色彩の授業を行うアルバースと学生 1952年 撮影者不詳 ジョセフ&アニ・アルバース財団
Courtesy of the Josef and Anni Albers Foundation

 1919年、ドイツのヴァイマールにて美術・デザイン・建築などの総合的な学校として設立された「バウハウス」。文明を否定した当時のダダなどとは異なって、それは新たな社会の秩序を探っていくものであった。33年に閉鎖するまで、ヨハネス・イッテンやカンディンスキー、クレーなど一流の芸術家たちが教鞭をとり、その教育法は今に至るまで多大な影響を与えている。画家、デザイナー、美術教師として知られるジョセフ・アルバース(1888–1976)は生徒として、そして教師として「バウハウス」に関わっていた一人である。後には芸術を基礎としリベラルアーツ教育を掲げた「ブラックマウンテン・カレッジ」でも指導的立場にいた彼が大切にしていたのは、知識を教えることではなく、学生に課題を与え、手を動かして考え「目を開くこと」であった。本展ではアルバースの人生とその作品を総覧するとともに、彼が教育を通して何を伝えようとしていたのか、その核心に迫ることができる。ちなみに、常設のワークショップ・スペースではアルバースの課題を体験可能。当時の学生を夢中にさせ、今もなお影響を与え続けているアルバース先生の授業に挑戦して、夏の自由研究といこうじゃないか!

インフォメーション

ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室

会場:DIC川村記念美術館
会期:2023年7月29日(土) 〜11月5日(日)
時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
休み:月曜日(ただし9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
料金:一般1,800円、学生・65歳以上1,600円、高校生以下無料、

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アルフレド・ジャー「終³」
@SCAI PIRAMIDE

Photo by Daido Moriyama

 アルフレド・ジャーはチリ・サンティアゴ出身でニューヨークを拠点に活動をするアーティスト、建築家、映像作家。その作品はリサーチベースで社会的不公正に切り込むジャーナリスティックな視点により、「現実」とされている世界の周縁を暴き出している。広島を中心とした近代政治史に言及した《Silent Flash》(2023) からも長年の姿勢が変わっていないことが伺える。《The End of the World》(2023)と題された世界初公開の彫刻作品、そしてこちらも初公開となる、写真家・森山大道とのコラボレーション作品が並ぶ。しかし、「終³」と題された本展タイトルからは不穏な空気を感じずにはいられない。世界の終焉、ディストピア的な未来の予見、そんな意味が込められているそうである。たしかに未来は希望ばかりとは言えないのが現状だ。ただ、作家が芸術の可能性を信じているように、今を憂うだけでなく、我々鑑賞者も作品からメッセージを受け取り、思いを巡らすことができれば、少しずつ何かが変わるのかもしれない。ちなみに、本展はチリ国立サンティアゴ美術館での回顧展と広島市現代美術館で開催される第11回ヒロシマ賞の受賞記念展に合わせての開催となっている。チリはちょっと遠いかもしれないけれど、3年にわたる改修工事を終え、リニューアルしたばかりの広島市現代美術館にも行ってみるのもよさそうだ!

インフォメーション

アルフレド・ジャー「終³」

会場:SCAI PIRAMIDE
会期:2023年7月29日(土)〜 9月30日(土)
時間:12:00 〜 18:00
休み:日・月・火・水・祝日
夏期休廊:2023年8月10日(木)〜20日(月)
料金:無料

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谷澤紗和子「彼方の手に触れる。」
@See Saw gallery+hibit

谷澤紗和子《ヒヤシンス—彼方の手に触れる。—》2023年

 愛知県名古屋市にあるギャラリー『See Saw gallery+hibit』にて美術作家・谷澤紗和子氏の個展「彼方の手に触れる。」が開催中。本展で展示される作品の媒体となるのは、西洋男性中心主義的な美術史において、あまり注目されてこなかった「切り紙」。作家は、この「切り紙」というメディアがもつ可能性に着目し作品を制作。会場では3つのシリーズで構成され、新作を中心とした24点を展示している。油彩や彫刻などと違って、誰にでも経験がありそれぞれに味が出る「切り紙」の表現には、王道の芸術に対する、やさしくも力強い反抗精神が宿っているかもしれない。展示された作品の造形の美しさや面白さは勿論だが、特権的な表現技法を用いていないが故に、見ているうちに自分でもやってみたい! と素直に思えるし、逆に、アートや性差のなかにおける特権的な構造にも気づきがありそうだ。なお、展示期間中はギャラリーでカフェも営業しているそう。ゆったり過ごしてみるのもいいかもしれない!

インフォメーション

谷澤紗和子「彼方の手に触れる。」

会場:See Saw gallery+hibit
会期:2023年7月8日(土)~9月2日(土)
時間:12:00~17:00(金、土曜日は〜19:00まで)
休み:日、月、火曜日
夏季休廊:8月13日(日)〜8月22日(火)
料金:無料

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南山城学園の粘土室
@art space co-jin

 京都府京都市上京区河原にある『art space co-jin(アートスペースコージン)』はきょうと障害者文化芸術推進機構が運営する、障害のある人の作品や表現に出合うことができるギャラリー。現在開催中の「南山城学園の粘土室」では、社会福祉法人南山城学園が運営する障害者支援施設内にあるアトリエ、通称「粘土室」に通う9名の表現を紹介している。「粘土室」では陶芸を中心に、利用者によってさまざまな制作活動が行われている。粘土をちぎる、削る、絵を描く……etc。それは創作でありながらも日々の生活の営みに近い。粘土室で流れる豊かな創作の時間を共有することで、何かを表現することの面白さや楽しさ、生活と創造の地続きの関係性を感じることができそうだ!

インフォメーション

南山城学園の粘土室

会場:art space co-jin
会期:2023年7月18日(火)〜10月1日(日)
時間:10:00-18:00
休み:月曜日
臨時休業:8月13日(日)、8月15日(火)
料金:無料

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