TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#4】酒と涙と猫と真珠

2022.12.01(Thu)


photo & text: Ushio Yoshida
edit: Yukako Kazuno

 つい先日、再び奈留島へ。前回書いた「真珠葬」の感謝祭に参加するためだ。夜、博多港からフェリー太古号に乗り、早朝奈留島に到着。快晴。前回と同じ、『民宿かどもち』の葛島夫妻にお世話になり、気分は「里帰り」。美しい海も「お帰り」と言っている(気がした)。

里帰り気分にさせてくれる『民宿かどもち』の葛島義信さん。

 感謝祭の第一部では、長崎大学・松下吉樹教授のお話。「僕はこれが専門じゃないけれど…」と言いながらも、天然アコヤガイによる真珠の養殖がいかに海洋資源の保護に役立つかを教えてくれた。真珠葬はカーボンニュートラルやSDGsに貢献しているんだって! 真珠葬の父・清水多賀夫さんは、アコヤガイをどう育てるか、実物を見せて解説してくれた。実際に、これから卵を産んでくれる2~3年モノのアコヤガイを、船上からみんなで海に放つ「放流」も体験。ちょっといいことをした気分になれた。

卒業生たちのフォトスタンド。真珠の粒がみんなデカい!

 真珠葬の体験者は「卒業生」と呼ばれる。愛犬や愛猫への思いや身の上話を互いに話して、初対面でもすぐにうちとけた。なんかみんな底抜けに明るいの。卒業生だけでなく、帰還を待っている人や奈留島の住民も参加。

これが稚貝。奈留島の海はプランクトン豊富でよく育つそう。
アコヤガイの放流。

 第二部はミニコンサート。真珠葬をテーマに、歌手のEPOさんが歌い、俳優の宮川雅彦さんが語る「うたいかたり」。実はおふたりも卒業生。体験をもとに、感謝祭のためだけにオリジナル曲を作ってくれたという。この歌が…言葉が…もう泣けて泣けて。愛する者を失ったときの自分のダメさ加減、悲しみとやりきれなさを表現した曲。そして、現実を受けとめて前を向けるようになる曲。彼女の、透明感とある種の神々しさを帯びた歌声に、全員がすすり泣いた。愛しいあの子を、楽しいときを、つらかった時間を思い出して、泣いた。あの45分は時空を超えた気がした。

EPOさんと宮川雅彦さんを囲む卒業生たち。全員泣き顔。

 コンサート終了後、すかさず記念写真の撮影。もう、みんなひどい顔してんのよ。目は赤く、メイクは落ち、マスクの下も大洪水。なのにカメラマンさんが「マスクとってくださーい」と叫ぶ。「拷問か!」と爆笑が起きた。夜は松下教授プレゼンツBBQで盛りあがった(五島牛! 鯛の塩釜焼! 七福芋焼酎! 松下先生ありがとう!)。

宴の後、清水さんと密談。「うちの夫、後継者にどうすか?」

 キクのおかげで得難い体験をし、友人もでき、奈留島にご縁もできた。朝ドラ『舞いあがれ!』でも、ヒロインが幼少期に心と体を癒したのが五島だったね。祈りと癒しの島に移住しちゃおうかな。そんな妄想も広がる、酒と涙と猫と真珠のお話。

プロフィール

吉田潮

よしだ・うしお|1972年生まれ。法政大学法学部政治学科卒業。編集プロダクションで健康・美容雑誌の編集を経て、2001年よりフリーランス。テレビドラマ評を中心に『週刊新潮』『東京新聞』で連載中。『週刊女性PRIME』『PRESIDENT Online』などに不定期寄稿。NHK『ドキュメント72時間』の「読む72時間」(Twitter)と「聴く72時間」(Spotify)を担当。介護や家族問題、マンション理事会も鋭意取材中。トレースイラストも描く。

Official Website
yoshidaushio.com

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