ライフスタイル
第二話 – 音声圧縮技術とファッション –
文・吾妻光良(全4回)
2022年6月6日
text: Mitsuyoshi Azuma
edit: Yukako Kazuno
吾妻と申します。前回、40数年会社勤めをしていた、と書きましたが、まあその大部分は映像関係の音声現場の仕事をしていたので、学校を出て20年弱は、ワークシャツにジーンズ、みたいな格好で仕事に行ってたわけですが、ある日、「カンリショク」というものになりなさい、と言われました。
いざ自分がその立場になるにあたり困ったのがスーツの問題です。ほとんどの上司はスーツを着て職場に来ていますが、こちとらは結婚式やお葬式を含めて、スーツを着たのはせいぜい50回ぐらい?で着る度に居心地の悪さを感じていましたし、何かスーツってロックとかブルースっぽくないよな、とガキの様に思っていたわけです。何とか今の服のままで通したい、と思うのですが、日本の同調圧力は凄まじく、そんな服で出社しようものなら、おい、スーツはどうした、と聞かれるのが関の山です。
そんな頃、音声関係の仕事をしていた、と申しましたが、音声のデジタル化ではデータ量の議論が欠かせません。何も考えずにデータ量を削減するとこんな音になってしまいます。
これは相当ババッちく、まさに神聖な会社のオフィスにジーンズで踏み込んでいく様なものです。しかしきょう日皆さんが何気なしに聞いているmp3という「圧縮音声」を使えば、
おお、全然ババッちくないのに、データ量はほぼ同じなのです。何故こんなことが出来るかというと、人間の耳の「大きな変化があればその周りの小さな変化には気づかない」という特性を利用しているのです。なるほど!と膝を打った私は、床屋に行ってそれまでの長髪しかも頭頂部薄毛、という髪型を坊主頭にしてもらいました。そして翌日出社して・・・
「おはようございまーす・・・」
「お? あ、おっ、おおおおーー!」
オフィスの上司や同僚達はどよめきました。よもや坊主頭で出社するとは思っていなかったので、皆、一様に驚き、これがほぼ4〜5日続きましたが、実は皆さん、目線が「大きな変化」である頭に行ってしまうので、ジャケットの下が実はジーンズだったという「小さな変化」に気がついたのは翌週になってからで、以後どさくさに紛れ、その格好のまま無事に出社していました。改めていま考えてみると、昔のブルースマン達もほぼスーツ姿でしたし、素直にあの時スーツを着ていればPOPEYEでももっとまともなことが書けていたのかも知れませんね。
プロフィール
吾妻光良
Official Website
https://s-boppers.com/
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