ライフスタイル
第一話 – ブルース小僧とファッション –
文・吾妻光良(全4回)
2022年5月24日
text: Mitsuyoshi Azuma
edit: Yukako Kazuno
大変だ、POPEYEから原稿を頼まれてしまった。POPEYEといえばファッション誌ではないか。あ、ご挨拶が遅れました、吾妻と申します。
簡単に自己紹介しますと1980年から40年余の会社勤めの後、昨年退職し現在は「The Swinging Boppers」というバンドを中心に自称ミュージシャン、時々無職、という日々を送っています。
ふふん、ずいぶん年寄りなのにバンドなんかやってんだ、と鼻で笑われるかも知れませんが、若い頃に日本で吹き荒れた「ブルース・ブーム」なるものにすっかりやられ、朝も昼も夜も黒人のブルースを聞き漁り、そのギターや歌を必死にコピーする、という若い頃の体験が尾をひいているのです。
周囲の友人達も、野放図にブルースのレコードを買い漁って、あっ、という間に仕送りが底をつき、一週間牛乳だけ飲んで、押し入れに頭を突っ込んでレコードを聴いてたり、小麦粉だけの食事に飽きてチリ紙の天ぷらを食べたり、という様な生活で、どう見てもファッションとは縁遠い青春だったので困り果てています。
でもさすがにどんなファッションが流行っていたか、は知ってましたよ。当時はね、先ずはベルボトム。ご存じ無い? ラッパズボン、というのかな、裾が拡がったヤツでね、高校3年の時に有志で修学旅行に行く、という時に初めて私も買いました。裾の拡がりがロックっぽくてね。で、旅行先で友人達とボートに乗ったらビリッ!とケツが裂けて帰るまでの間、ずっとガムテープで止めて履いてましたね。
あとは高いヒール。浪人生の時に満を持して買いました。予備校に得意げに履いていくと、他の教室から高校の同級生達が何人も見に来るので、ふふふ、俺のファッション・センスも大したものだ、と悦に入り、これなかなかいいだろ?とあるヤツに尋ねると、
「いや、何か吾妻が便所の下駄履いて登校してるから見に行くといいよ、って言われて」という答えにショックを受けました。
決してファッションに関心が無かったわけではなく、レコードやお酒でファッションに回す金が残らなかったのです。しかしある日、大学の近くにJメイト、という激安店が出来て、セールで薄手のジーンズが300円!我も我も、と友人達が買いに走ったわけですが、買ってから良く見ると余りにも薄手のため、カタチがしっかり見えてしまう、という弱点に気がつき、すぐに誰も履かなくなりました。気がつくと下半身の話ばかりですね、ガニマタだったからかな? ま、O脚とは忘れ去ることなり、とも言いますからね。
プロフィール
吾妻光良
Official Website
https://s-boppers.com/
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