映画では、ひとつのシーン内での人物たちの画面内での左右関係を混乱させないため、イマジナリーラインというものを設定し、それを越えないようにしましょうという暗黙の了解がある。しかし、本作はそんなラインを涼しい顔で踏み越え、ひとつの空間で別々に親密圏を築いている者たちを自由に撮り、それぞれのショットをさらりと繋げてしまう。キッチンでダンスを踊るカップルと何食わぬ顔の猫、部屋で談話する母子とベランダで洗濯物を干す祖母……。繋げてしまえば繋がってしまうし、繋がってしまえば繋がっているように見えるんだから、繋げますよ、という具合だ。こうした空間把握能力が、本作のキモと言えるかもしれない。“ひとつの空間“は“世界“へと広がり、マドリードと日本で展開されるそれぞれに無関係の3つの物語が、国境を越えて大胆不敵に繋がれる。なるほど、国境とはイマジナリーラインでしかなかったのか。7月19日よりポレポレ東中野、8月よりシネ・ヌーヴォにて公開。
『海賊のフィアンセ』を観る。
知る人ぞ知る異端の映画監督、ネリー・カプランが1969年に発表した作品だ。舞台は架空の村テリエ。そのはずれで母と暮らすマリーは、不法滞在者であるがゆえに、他の村人たちからつまはじきにされている。母が...
『THE END(ジ・エンド)』を観る。
ポストアポカリプス的な状況下の地球において、地下シェルターで贅沢に暮らす富裕層一家とその仲間たちのお話だ。しかし、広大な塩抗の中に設られた彼らの家はハリボテめいていて、そこで営まれる装われた普通の暮...
『ジェイ・ケリー』を観る。
年末の恒例行事となりつつある、バームバック監督作のネトフリ独占配信(とはいえ、数えてみると2、3年に1本のペースだったが)。今年、その主役を務めるのは、ジョージ・クルーニーだ。クルーニー演じるジェイ...
『ネクロポリティクス 死の政治学』を読む。
平和の象徴と目されもする民主主義は、同時に分断を生み、虐げられた者たちを死に至らしめる暴力装置として、要するにネクロポリティクスとしても機能してきたし、今もしている。黒人差別やガザの現状を鑑みれば自...
『ヒップホップ名盤100』を読む。
よくある「歴史を動かした名盤100選」ではなく、「2025年の気分で聴ける名盤100選」であることを目指したっていうコンセプトがまずいい。どんなアルバムが紹介されているかはその目で確かめていただくと...