親父コッポラが巨額の私財を投じて完成させたこの壮大な”自主映画”は、戸惑いを通り越して恐れ慄くしかない傑作だ。何に一番似ているかといえば、万博かもしれない。実際、近未来都市ニューローマを舞台に描かれるのは、建築家カエサルが、利権を貪る市長キケロと対立しながらも、その娘と恋仲になったりしつつ、ユートピアを立ち上げようと奮闘する姿……なのだが、彼が目指すのは、20世紀に人類が夢見ながらついに実現できなかった、そして今はもう誰も現れるとは信じていない、昔懐かしい未来(レトロフューチャー)なのだから。批評家のフレドリック・ジェイムソンは、 未来のユートピアについての実現可能な青写真を提示することではなく、ユートピアを想像する試みの絶えざる失敗を通して私たち自身が生きる現代社会が囚われた閉域を逆照射することにこそ、SFの使命があるという。その意味において、真に偉大なSF映画であることは間違いない。6月20日より公開。
『海賊のフィアンセ』を観る。
知る人ぞ知る異端の映画監督、ネリー・カプランが1969年に発表した作品だ。舞台は架空の村テリエ。そのはずれで母と暮らすマリーは、不法滞在者であるがゆえに、他の村人たちからつまはじきにされている。母が...
『THE END(ジ・エンド)』を観る。
ポストアポカリプス的な状況下の地球において、地下シェルターで贅沢に暮らす富裕層一家とその仲間たちのお話だ。しかし、広大な塩抗の中に設られた彼らの家はハリボテめいていて、そこで営まれる装われた普通の暮...
『ジェイ・ケリー』を観る。
年末の恒例行事となりつつある、バームバック監督作のネトフリ独占配信(とはいえ、数えてみると2、3年に1本のペースだったが)。今年、その主役を務めるのは、ジョージ・クルーニーだ。クルーニー演じるジェイ...
『ネクロポリティクス 死の政治学』を読む。
平和の象徴と目されもする民主主義は、同時に分断を生み、虐げられた者たちを死に至らしめる暴力装置として、要するにネクロポリティクスとしても機能してきたし、今もしている。黒人差別やガザの現状を鑑みれば自...
『ヒップホップ名盤100』を読む。
よくある「歴史を動かした名盤100選」ではなく、「2025年の気分で聴ける名盤100選」であることを目指したっていうコンセプトがまずいい。どんなアルバムが紹介されているかはその目で確かめていただくと...