
2006年にニューヨークで誕生したスローパフューマリー、〈LE LABO〉。スタイリッシュでヨーロピアンなブランドイメージを持ちながら、その内面にはクラフトマンシップの精神が息づいている。調合やラベルの貼付は人の手仕事によるものだし、パラベン、動物性原料、防腐剤、人工着色料は不使用。マニフェストの中に、自然主義を唱えた第一人者、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの影響が記されていることにも、骨太なものを感じた。19世紀末に自給自足の暮らしを送ったソローの思想が、フレグランスに宿っているとは。思わず付けたくなってしまった。

定番は17種類のスタンダードな香水と、8種類のホーム フレグランスや11種類のキャンドル。さらにパリやシカゴ、香港など、特定の都市に敬意を表して創られた、シティ エクスクルーシブというシリーズも展開している。いつもはその街でしか入手できないけれど、年に1度、9月だけはどの国でも全ての香水が購入できるという。つまり、今年新たに登場したベルリン限定の『セドラ 37』を手に入れるチャンスというわけ。ショップで試してみたら、柑橘の瑞々しくフレッシュな香り。レモンの原種であるセドラに、ジンジャー、ウッドとムスク、アンバーグリスを加えているらしい。行ったことはないけど、スカッと晴れたベルリンの空を妄想した。

ホームタウンということで気になっていた、東京の香り『ガイアック 10』もシュッと一吹き。ウッディで、上品な香りがほのかに立ち上る。パロサントの一種でもあるガイアックウッドに、シダーを混ぜているんだそうだ。自分が住む街の香りをまとうってなんかいい。……そうそう、ソローが上梓した名著『森の生活 ウォールデン』のなかに、こんな言葉があったっけ。“すべての自然は君に対する祝賀であり、君は自らを祝福すべき理由を刻々にもつ”。それはまさしく、〈LE LABO〉を付けた今の気分にぴったりだった。