ポパイ五十周年
インタビュー集

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POPEYE 50周年記念インタビュー

W. David Marx

プロフィール

W. David Marx

W・デーヴィッド・マークス|1978年、アメリカ・オクラホマ州生まれ、フロリダ育ち。日本在住は20年以上。日本洋服文化史の『アメトラ』と総合文化論の『STATUS AND CULTURE』の著者。また英語版『POPEYE』の翻訳主幹も勤めている。日本地方文化誌『THE NEW JAPAN』の編集長。

Q1. あなたと『POPEYE』の関わりは?

初めてポパイに出会ったのは、2000年に卒業論文のために『A BATHING APE』を研究していた時でした。そして2003年に日本に戻ってきてから、ポパイの70年代のもを目にするようになり、そのアメリカっぽい美学に魅了されました。2008年には木下孝浩さんと長谷川昭雄さんにBRUTUSのモデルとしてスカウトされ、お二人がポパイに移籍されたのを機に、私もポパイの執筆に携わるようになりました。『アメトラ』はポパイで一年間で連載して頂きました。それ以来、エッセイの執筆や、英語版の翻訳コーディネーションなど、ポパイに貢献できることを光栄に思っています。

Q2. シティボーイと聞いて最初にイメージする物(服)は?

これ、けっこう頑固な答えになっちゃうと思うんですけど……。シティボーイという言葉がずっと続いている理由、あるいは『POPEYE』が長く支持されている理由は、「特定のひとつの時代を代表しているから」ではないと思うんです。どの時代にもシティボーイはいる。だから——。

シティボーイって、70年代のスケーターでもいいし、バーシティジャケットを着ているアメカジの人たちでもいい。80年代の渋カジでもいいし、いまのシティボーイももちろんそう。全部ひっくるめてシティボーイなんです。

「これがシティボーイを代表している」というひとつの像は、実はないんですよね。でも——「シティボーイじゃないもの」は明確にあります。

例えば、最先端の黒いスーツをビシッと着ている感じは、あまりシティボーイっぽくないと思います。ある程度アメリカのカジュアルに根付いていたり、少しだけフォーマル寄りでも、アメリカのプレッピー的な文脈にある洋服が「シティボーイっぽい」んですよね。

15年前ならもっとスリムだったし、今はビッグフィットだったりと、シルエットの差はある。でもなんとなく「オックスフォードのボタンダウンのシャツを着ている感じ」が、シティボーイらしさに通じている気がします。最先端すぎると、少し違うんですよね。

Q3. 日常的に着ている(買い足している)Tシャツは?

Tシャツはね、25歳くらいで“卒業”したんです。高校・大学の頃、そしてニューヨークの「TOKION」という店で働いていた頃は、ずっとTシャツとジーンズでした。でも25、26歳くらいのとき、「Tシャツは子どもっぽい」と思い始めて。白髪も出てきて、その白髪に合う洋服を着なきゃいけないと思ったんです。

それで、好きなTシャツは劣化しないようにちゃんと保管して、どうでもいいTシャツは夜のパジャマみたいに使うようになりました。

ただ、90年代の〈J. Crew〉のヘンリーネック——紺に白のパイピングが入ったヘンリーのシャツは今でも家でよく着ます。ロゴが入っているわけでもなく、ただのヘンリーネック。それはまだけっこう好きですね。でもそれを着て外に出ることは、ほとんどないです。

夏だと、たまに最近「stacks bookstore」で買った「神保町」と書いてあるTシャツとか、〈CAHLUMN〉のTシャツとか、もう少しサイズが大きめのものを使っています。あと〈HUMAN MADE〉のTシャツとか。でも本当に夏だけです。

——真夏は、Tシャツ以外だとどんな服を着ているんですか?

長袖のシャツですね。オックスフォードとか、マドラスのシャツを袖まくりしたり。半袖に短パンだと、完全に小学生みたいになっちゃうので。大人として……半袖なら長いパンツ、短パンなら長袖。そんな感じです。

本気で「30歳で髪が真っ白になる」と思ってたんですよ。実際はならなかったんですけど。なぜかそう確信していて、真っ白な髪に合う服が必要だと思って、早めに切り替えたんです。今考えると、ちょっと変な話ですよね(笑)。

Q4. あなたのワードローブに欠かせないジャケットは?

ジャケットは……どうしても“紺ブレ(ネイビーブレザー)”ですね。でもアメリカの文脈だと、紺ブレって「50歳の真面目な教授」みたいなイメージにもなる。だから、そういう気分じゃない日も増えてきました。

逆にコーデュロイのジャケットだと、ちゃんとしているけどラフで、そのバランスがとてもいい。昔はツイードも大好きだったんですが、地球温暖化でツイードが着られる日がすごく少なくなったので、もうほとんど買わないですね。コーデュロイは秋と冬だけです。

紺ブレは〈BEAMS PLUS〉。コーデュロイは、このあいだ〈BEAMS PLUS〉のコラボのものをいただきました。あとは〈鎌倉シャツ(メーカーズシャツ鎌倉)〉——鎌倉クラシックスのジャケット。たぶん50〜60年代のアメリカの大学生が着ていたような、芯も入っていないラフな形で、カジュアルでとてもいいんです。

——どうやって〈BEAMS PLUS〉や〈鎌倉シャツ〉にそこに行き着いたんですか?

やっぱり『アメトラ』という本を書いて、みんなと仲良くなって、たまに仕事をもらうようになったから。なんとなく日本のブランドを着るようになりましたね。もちろん「MADE IN USA」も着ていましたけど、日本のものの良さに気づいたというか。

Q5. あなたのワードローブに欠かせないシャツは?

僕は〈鎌倉シャツ〉がとても多いんですが、いいのは気軽にオーダーできること。そんなに高くないし。僕、腕がけっこう長いんですよ。既製服だと合うものがほとんどなくて。値段も質も良いんですけど、考え直さなくていい。それがいい。カジュアルなシャツもビジネス用も揃う。

あと最近はヴィンテージの〈ラルフローレン〉のポロもよく買っていて、90年代のビッグフィットで変なパターンのオックスフォードとか。オレンジ、ピンク、レモンのスライスみたいな柄とか、今のブランドが絶対に作らないようなもの。90年代のポロはクオリティが本当に良くて、30年経っても新品みたいなんです。

僕のシャツの9割はオックスフォード。全色集めようとしていて、白が6枚、サックスが6枚。ストライプやピンク、グリーンとか、虹みたいに揃えたい。でもだんだん分かったのは……白とサックス以外は案外使いづらい(笑)。グリーンはたまに使えるけど、オレンジのストライプとかは絶対に使えない。毎週ほとんど白かサックスブルーです。

Q6. あなたのワードローブに欠かせないスウェットは?

スウェットは……面白い話があって。僕、ハーバード大学に通っていたんですが、なぜか当時、ハーバードの学生ってほとんどハーバードのスウェットを着てなかったんです。他の大学だとみんな着ているのに。学生はたまにハーバード・アスレチッククラブみたいなものは着ていたんですけど、“ザ・ハーバード”みたいなのは観光客っぽくて。だから僕も全然持ってなかった。

でも10年前くらいに中目黒の古着屋でハーバードのスウェットを買いました。チャンピオンのリバースウィーブみたいなやつ。スウェットは日本の気候と合っていて、けっこう使っています。

〈TSUKI〉というブランドがあって、ほとんどパンツのブランドなんですけど、すごくいい黒のスウェットを作っていて、それをよく使っています。今年チョコレートブラウンっぽい色のを作っていて、それもそのまま買いました。

無地のものが多いですね。僕、結構無地のものが好きなんです。昔、原宿の〈ユナイテッドアローズ〉で「LIBERAL」って書いてあるスウェットを見つけて、すごく面白くて買ったんですけど、あれを着ると「それどういう意味ですか?」って必ず聞かれるんですよ。正直、そういう政治的な意見は自分の中にあるけど、あまり自分の政治をスウェットで表現したいとは思わない。言葉が大きく書いてあると、絶対何か聞かれますからね。

Q7. あなたのワードローブに欠かせないニットは?

ニットは〈BEAMS PLUS〉のシェットランドが多いですね。あと冬は、ジャケットの下にセーターベストを着ることが多いです。シェットランドニットって、すごく暖かいし、テクスチャーがしっかりある。あれは本当に便利ですね。

10年まではいかないですけど、かなり長く使ってますね。〈J.PRESS〉のシェットランドの別注のやつもあったんですけど、あれはもうかなり劣化しちゃいました。15年前くらいのもので。セーターって、まず肘のところがダメになるじゃないですか。それを直すのに「ビッグママ」というリペアのチェーンがあるでしょう。あそこによく行きます。一回直してもダメだったら、パッチを付ける。

今、〈LL.Bean〉のノルウェージャンセーターも15年くらいずっと使っているんですけど、それもパッチを付けました。僕、古いものをどうしても捨てられないんですよ。汚れがどうしてもダメになったら捨てるけど、穴ならパッチを付ければいい。セーターだと全体がダメになったら直せないこともあるけど、たいてい肘のところだけなので、そこにパッチをつければいいんじゃないかな、みたいな。それも「ビッグママ」でやってもらったり、妻がやってくれたりします。

Q8. あなたのワードローブに欠かせないジーンズは?

ジーンズね。僕、高校4年生の春まで、ジーパンを全く履いてなかったんですよ。本当に18歳になるまで。子どもの頃には少し履いていたかもしれないけど、高校生になってからは全然で、全部カーキのパンツだけでした。

なぜかというと、ほとんどの服が兄のお下がりで、兄がすごくいい「リーバイス501」を持っていたんですけど、すごくスリムだったんです。当時、僕は背が高くてすごくガリガリだったから、ジーパンを履くと脚が棒みたいに見えて、すごく恥ずかしかった。だからジーパンは嫌だな、と思っていた。

それが、ワイドレッグっぽいシルエットが出てきて、これならいいなと思って履き始めた。大学の頃、ニューヨークには日本のブランドってほとんどなかったんですけど、〈45rpm〉はあって、そこでジーパンを買って、ほとんど毎日履いていました。

そのあと、「501」のシュリンク・トゥ・フィットのやつが、昔はすごく安く手に入ったんですよ。1本4000円くらいで。それもずっと履いていました。最近は、〈TSUKI〉の原田さんが作っているジーパンをよく履いています。わりとクラシックなものが好きなんです。

Q9. あなたのワードローブに欠かせない下着は?

下着は〈Brooks Brothers〉のオックスフォードクロスのトラディショナルフィットのトランクスです。めちゃくちゃおじさんっぽいでしょ(笑)。でもずっとそれです。20代くらいからずっとですね。いつもボクサータイプなんですけど、あのモデルは多分15年前から、店に常に置いてある定番なんですよ。

ただ、結構高いんです。1枚、アメリカだと25ドルくらいかな。それでも下着としては高いですよね。色は白とサックスブルーですね。シャツと同じです。シャツと下着が同じ色だとちょっと恥ずかしいですけど(笑)。

でも「これじゃないとダメ」という感じになっていて。夜のパジャマ用には、無地でフィットが少し緩いものを別で使っています。あれはもうボロボロになってもなかなか捨てない。なぜ捨てないかというと、「下着って高い」と思い込んでるから。でも、そのあたりの感覚は、そろそろアップデートしなきゃいけないですね。

Q10. あなたのワードローブに欠かせない靴下は?

靴下はいつもアメリカで買います。ターゲットとか、いわゆるマートみたいなところで、12足パックの〈Hanes〉とかをまとめて買う。アメリカの靴下って、けっこう丈夫なんですよ。2〜3年は普通に使えます。向こうに行った時にまとめ買いして持って帰る。靴下と下着用のTシャツは、いつもターゲットで買ってます。

Q11. あなたのワードローブに欠かせないズボンは?

ズボンだとチノパンがすごく多いです。やっぱりツイルの生地が好きで。あとは、軍服そのものではないけど、軍パンから影響を受けたベイカーパンツとかをよく買っています。

最近は、夏になるとジーパンは全然ダメです。ジーパンは本当に6月くらいから4カ月くらいお休み。短パンか、リネンのズボンですね。〈nanamica〉の麻のイージーパンツみたいなものとか。〈CAHLUMN〉で買ったリネンパンツとか、すごく涼しいものを履きます。

——ベージュは色々なカラーがありますが、どう揃えていますか?

好きな色のレンジがあって、その中で全部のトーンを持っている、みたいな感じです。5〜6本くらいですね。キャラメルっぽいベージュとか、カーキ寄りのベージュはすごくかっこいいと思うんですけど、全然合わない色もあります。パステル寄りのベージュとかはダメですね。もっと中立的なベージュがいい。

微妙に違うんですよ。これは回数が多くてこなれているとか、今日はノータイでラフだからこっち、とか。シャツをタックインしない日は、このパンツは合わない、とか。カフ付きのパンツはタックインしないとダメとか。そういう小さなルールがあって、それで決めますね。

——着るものは、何から選びますか?

そうですね。今日は絶対このジャケットを着たい、っていう日もあるので、そういう時はジャケットから逆算します。「このジャケットに合うズボンとシャツは何か」。逆に「今日はこのセーターを着たい」だったら、そこからシャツとズボンを決める。靴から決めることもありますね。靴ってけっこう大事で、「今日はすごく歩くからスニーカーにしよう」とか。そうすると、このズボンはスニーカーと合わないからダメ、このズボンならOK、みたいな。

——その日の予定にも左右されるんですね。

最近は予定がすごく多いから、本当に自由に決められる日はほとんどないですね。予定に合わせて決める感じです。会社に行く日はこういう感じにするとか、ビームスの人と会う日はビームスを着た方がいいとか、そういうのも結構あります。

——前日に決めるんですか? それとも当日?

まあ、すごく大事なイベントがあって「明日はスーツにしなきゃいけない」という時は前の日から考えますけど、ほとんどは朝シャワーを浴びてから決めます。たまに、月に1回くらい、本当に30分くらいかけて全部着てみて「いや、やっぱり違うな」と着替え続ける日もありますね。

今日はまさにそういう感じでした。最初は紺ブレにしようと思ったんだけど、「ちょっと大人っぽすぎるかな」と思ってカーディガンにした。そのカーディガンが見つからなくて、「クリーニングに出す用」に置いてあったんですけど、それが息子のクローゼットに紛れ込んでいて、「あ、あったあった!」って(笑)。

Q12. あなたのワードローブに欠かせないスニーカー?

まず、僕の足は31センチなんです。だから、かっこいいコラボとか限定モデルは、ほとんど僕のサイズが作られていない。日本のブランドもほとんどサイズ31を作ってないし、Nikeも日本では31センチを売ってない。だから日本では全く靴を買わないんです。アメリカに帰った時に買います。

このあいだ、〈BEAMS PLUS〉と〈SPERRY〉のスニーカーをもらったんですけど、あれは夏にカジュアルに履くにはすごくいい。でも僕は、理想的には毎日10キロ以上歩く生活なので、しっかりしたスニーカーじゃないと足が痛くなるんですよ。

だから、〈Nike〉のコルテッツみたいな昔からあるモデルとか、〈New Balance〉のクラシックなモデルが好きです。クラシックなスタイルのものなら、型番はそこまでこだわらない。〈New Balance〉だと574とか990番台とか、あのあたり。洋服にも合わせやすいし、ジャケットスタイルに合わせてもギリギリOK。でも足に優しい。そこが一番大事です。

Q13. あなたのワードローブに欠かせない革靴は?

よく使っているのは〈Alden〉のローファーですね。少し前は、アメリカのeBayで古い〈Alden〉や〈Allen Edmonds〉を探してよく履いていました。

今もたまには履くけど、年を取ると足が痛くなりやすくて、以前ほどは履けなくなりました。レザーシューズは、本当にどうしてもイベントに出なきゃいけない時とか、ちゃんとしたミーティングがある時に使っています。でもあれで5キロも歩くと、足が痛くて大変です。

特にローファーは痛い。レースアップの靴だと、さらに重くなりますよね。〈Alden〉のインディブーツも持っているんですけど、雨や雪の日にはすごくいい。でもかなり重いし、脱ぎ履きの多い日は絶対に履かないです。めちゃくちゃ面倒くさい。日本って、靴を脱ぐ機会が多いですからね。

靴って大事ですよね。例えば、「今日は友だちとコーヒーだけの予定だけど、ちょっとプチ観光もしようかな。この博物館も寄ってみようかな」とか、そういうことって結構あるじゃないですか。友だちに「ごはん行こう」と誘われてレストランに行ったら、天ぷら屋で、靴を脱がなきゃいけなかったり。

海外の人って、靴ひもをちゃんと締めて出かけるイメージがありますよね。日本人は靴を脱ぐ文化に慣れているから、逆にあまりきつく締めなかったりする。だから、お店の入口でみんながさっと靴を脱いで先に行っちゃって、自分だけ最後に「ちょっと待って」となったり(笑)。

それと、よく言われる話ですけど——最近はあまり聞かなくなりましたが、15年前くらい、「女性は男の靴を見て、男を判断する」ってよく言われていましたよね。あれは絶対ウソだろうと思ってたんですけど……。たまに駅で、女の子が僕の顔を見てから、すぐ足元を見て、また顔を見る、ということが本当にありましたね。

だから、靴を見れば「この人は何を目指しているか」がすぐに分かると思うんです。こういうジャケットを着ている人なら、足元を見て「革靴か。ちゃんとした真面目な人だね」とか。スニーカーなら、「あ、ちょっとふざけてる感じだね」とか。そうやって判断されるのだとしたら、革靴のほうがいいんですけど……やっぱり体がつらい。難しいですね。

Q14. 愛用しているハンカチは?

ハンカチは……。ジャケットにはポケットスクエアをよく挿しています。ただ、かなりミニマルに。あとは夏場、汗を拭くためのタオル。あれが大事です。タオルがあるかどうかで、夏の人生が変わるぐらい(笑)。タオルがあれば夏が耐えられる。でも忘れた日は本当に最悪で、汗だくになってしまう。

結構こまめに汗を拭いています。小さいパイル地のタオルをね。いまでもよく使っています。薄手のやつ。今日はそんなに暑くないから小さいので十分ですけど。〈ラルフローレン〉のタオルなんかも結構持っていて、真夏の時は本当に大きいタオルを持ち歩いたりもします。でも、よく失くすんですよ。大きいとポケットに入らないから、かばんに入れたり、手で持ったりしていて。

それ以外の、昔の紳士が使っているような「きちんとしたハンカチ」は、あまり買わないですね。昔、教会に行っていた頃、誰かが鼻をかんでいて困っている時に、父親が自分のポケットからハンカチを出して渡してあげた、ということはありました。あの時ですら、「これ、ちょっと古い所作だな」と思っていましたね。

Q15. あなたのワードローブに欠かせないアウターは?

アウターは、〈Barbour〉はずっと着ていました。僕の両親も、秋になると普通に〈Barbour〉を着ていたので。15年くらい前、すごく安く買えるタイミングがあって、その時に買いました。そのあと流行って、おしゃれなイメージになっていった感じですね。

それから、父親のお下がりで、80年代半ばのイギリスで買った、ものすごく大きなトレンチコートをよく着ています。すごく大人っぽいコートで、40代に入ってやっと似合うようになった。その前は、本当に「子どもが父親のコートを着てコスプレしてる」みたいな感じでした。とにかく大きくて真面目。

あとは、97年ぐらいにもらったパタゴニアのフリース。あれもよく使っています。秋と春の肌寒い時期に、グレーのやつを。ダウンはほとんど着ないんですけど、eBayで買った〈L.L.Bean〉のヴィンテージのダウンベストがあります。

いまは、春夏のものをクローゼットに入れて、冬物は全部地下室にしまっています。だから、地下から出してこないと何を持っていたか思い出せない。毎年ちょっと早めに「もう新しいのを買わなきゃ」と思ってしまって、実際に自分の持ち物を確認すると、「え、こんなにあるのか」と驚くんです。

Q16. 普段、使っているバッグは?

ずっとブリーフケースとして使っていたのは母親のお下がりで、80年代の〈COACH〉の100%レザーのブリーフケースでした。ずっとそれを使っていたんですけど、だんだんくたびれてきて。そうしたら、「グルカのもあるよ」と母が言ってくれて、それもずっと使っていました。

それから2年くらい前のクリスマスに、母親から〈FILSON〉のブリーフケースをプレゼントでもらったんです。あれはすごく便利。ただ、〈FILSON〉は全部重いですね。素材はワックスドコットン。紙の上に置いておくと、紙にオイルが移るぐらい。ポケットがたくさん付いていて便利なんですが、多すぎて「どこに入れたっけ?」と探す時間も長い(笑)。

普段の日常は、やっぱりトートバッグが多いです。最近の旅行は、スーツケースとトートバッグの組み合わせ。でもトートバッグだと、上が開いているからすぐ物が飛び出しちゃう。それで、「特に機内ではやめたほうがいいな」と思って、このあいだ飛行機に乗る時は〈FILSON〉を使ってみたら、すごくちょうどよかったです。

Q17. あなたのワードローブを作るのに欠かせないお店は?

多分、自分のワードローブの基礎になっているのは〈BEAMS PLUS〉じゃないかなと思います。〈BEAMS PLUS〉の面白いところは、定番のアイテム——オックスフォードのシャツとか、チノパンとか——アイビーやアウトドアをベースにしつつ、ちょっと最先端の要素が入っているところ。

だから、毎シーズン「何か1点だけ買おう」という気持ちで見ています。正直、洋服はもうありすぎて、あまり買い物したくはないんですけど(笑)、それでも〈BEAMS PLUS〉では本当に一点だけ、「いま自分にないもの」を買う感じですね。

このあいだも、短パンが欲しくて、〈BEAMS PLUS〉に行ったら、青いマドラスチェックのすごく軽い生地の短パンがあったんです。それにシャツジャケットもあって、セットアップになっていた。そのジャケットも最高で。

短パンとジャケットのセットアップを買って、それを着ると結構ね、奇抜。かなり目立つ感じなんですけど、パリのファッションウィークでかなり暑かったから、普通にそれを着ていたら、僕の前にいたイギリス人の女性が「That’s great!」みたいに言ってくれて。さらにフランス人の若い女性も、フランス語で「すみません、そのアンソンブル(セットアップ)、すごくシックですね」と褒めてくれたんです。

だから、〈BEAMS PLUS〉は定番だけじゃなくて、ちょっと派手なものもあるけど、自分のスタイルからはみ出さないくらいの「ほどよい派手さ」があって、そこが好きです。マドラスとかブルーとか、その辺は全然問題ない。

サイズ感も合います。サイズはXLがちょうどいい。それに、だんだん全体的に大きめのサイズ感にシフトしている気もします。海外への流通もかなり良くなっていますよね。パリの展示会は本当にすごくて、毎回700点くらい商品を持っていっているんじゃないかな。

〈BEAMS PLUS〉は、いまブランドディレクターの溝端秀基さんがいて。僕が初めて〈BEAMS PLUS〉に行ったのが2006〜2007年くらい、渋谷の店だったんですけど、その時よく話していた店員さんが溝端さんで。だから付き合いが長いというのもありますね。

Q18. ファッションで一番お金をかけるべきアイテムはなんだと思いますか?

多分、スーツですね。大人になったら、お金をかけたオーダーメイドのスーツを1着は持っておくべきだと思います。2番目は靴。当時、自分が〈Alden〉の革靴を買った時は750ドルくらいだったんですけど今は倍くらいになってるんじゃないかな。めちゃくちゃ高くなりました。でも一度買えば、多分一生使えるはずです。

そういう「一生モノ」は、いつか買った方がいいと思う。ただ、20代のうちはきついですよね。収入も少ないし、自分のスタイルもまだそこまで固まっていない。だから若い頃は、あまりお金をかけすぎない方がいい気がします。30代後半とか、少し貯金もできて、自分が本当に「何を永く使えるか」が分かってきた時に買うのがいいと思う。

——初めて「ちゃんとしたスーツ」を作ったのはいつ頃ですか?

24歳の時、ニューヨークで作りました。ニューヨークで採寸して、実際は香港で縫製するスタイルのテーラーで。当時で1000ドルくらい。かなり前の話ですけど。それが大失敗でした。すごくダサかった(笑)。

モッズスーツみたいなのが欲しかったのに、NBAの選手みたいな四角いシルエットになっちゃって。全然かっこよくなかった。スーツって、オーダーメイドだと2〜3回は失敗して、やっと「自分に何が合うか」が分かってくるものだと思います。それくらい難しい。

——「成功した」と初めて思えたのは何歳くらいの時ですか?

最近は「Tailor Caid」(テーラーケイド)で作っていて、あれはすごく良いですね。テーラーでオーダーするコツはひとつしかないと思っていて、「あまり自分の意見を出しすぎないこと」です。なんとなく「この人のスタイルが好きだから、任せます」というスタンス。建築も同じですよね。「この建築家が好きだから、この人にこういう家をつくってほしい。あとは任せます」と。でも、だんだん「あの部屋はこう、この部屋はこう」と細かく口を出し始めると、妥協だらけになってしまって、その人のビジョンが生きない。だから、テーラーのビジョンを生かした方がいいと思います。

昔、日本に来たばかりの頃は、「並木テーラー」によく行っていました。あれは楽しかったな。4万〜5万円くらいで、ちょっとおしゃれなんだけど、どこかバランスのおかしいスーツができる(笑)。でも、あれも「テーラーとはこういうものか」を知るうえですごく良かった。そこからタキシードも作って。「〈Thom Browne〉風のものを作ってください」とお願いするんだけど、真似はできないから、すごく変なものになっちゃう(笑)。

Q19. 普段、使っている香水は?

香水は、大人になってからですね。いま使っているのは、もう廃盤になってしまった〈JO MALONE〉の「Juniper & Black Cedarwood」です。もう作られていないから、ちょっと困っています。すごく気に入っているんですけど、もう手に入らない。メルカリでサンプルサイズを見つけては、ちびちび使っていて、今はほとんど保存用にしています。

コンセプトは「古い本の匂い」らしくて、けっこう暖かい香りです。一度、空港でJo Maloneのカウンターの人に「これを使っています」と言ったら、若い女性の店員さんに「え〜」と言われて(笑)。もしかしたら女性用として売っていた香りだったのかもしれないし、日本だとあまり男性が買わないのかもしれない。

でも、前に香水の評論家の人に、「女性用の香水を男性がつけて、男性用を女性がつけるくらいがちょうどいい」と言われて、その考え方も面白いなと思っています。ただ、それを言われると「じゃあ何を選べばいいのか、余計に分からなくなる」ところもありますけど(笑)。

Q20. 若いうちに買った方がいい服は?

まず、自分の体にフィットする定番ワードローブを作った方がいいと思います。本当に毎日、制服のように着られる服。それを最初にそろえる。コンブレ、白いワイシャツ、サックスブルーのシャツ、チノパン、ジーパン。そういう基本アイテムをひと通り揃えて、それが揃ってから、もう少し尖ったものを買っていくのがいいと思います。

Q21. シティボーイにふさわしい時計とは?

この質問、けっこう考えたんですけど……。

やっぱり「シティボーイ」はジェントルマンではないんですよね。だから、いきなりすごく高い〈ロレックス〉みたいな時計は、まだやめた方がいい気がします。ちゃんとしているけど、「見て見て、こんなにお金かけましたよ」という感じではない時計。〈タグ・ホイヤー〉くらいのライン——今の基準で「ちゃんとしていて、センスが良いけれど、そこまで高くない」時計がいいんじゃないかなと思います。それか、すごくシンプルなスウォッチとか。

Q22. シティボーイらしい車は?

車は、本当に難しいんですよね。

美学的には、古いベンツとか、すごくかっこいいと思います。『POPEYE』の世界観にも合うし。でも、燃費が悪いですよね。僕は、けっこう電気自動車が好きです。運転しやすいし。ガソリンを使わないという意味では、もちろん環境にもいいし、「地球を救おう」とまでは言わなくても、気持ちが楽になります。

次に買う車をどうするか、今も考えていて。「フィット」とか「プリウス」とか、機能だけを見れば最高だけど、かっこいいかは分からない(笑)。でも、機能性だけで言えば、そういう車が一番いい。そんなに高くないし、修理も安いし。

正直に言うと、シティボーイの生活には車は必須ではないと思います。ニューヨークの「江戸っ子」みたいな人たち——生まれも育ちもニューヨークという人たちは、免許を持っていないことが多い。タクシーか地下鉄で全部済ませる。

今、僕は車を持って郊外に住んでいるので、車は便利です。夏に別荘に行くときなど、車は最高ですしね。でも、「原宿に行こう」と思ったら、駐車場を探すのがすごく大変だし、シティボーイの生活そのものには、必須ではないと思います。

Q23. シティボーイが持っておくべきものは?

家具で言うと、「椅子」ですね。ある程度、安定して住めるアパートを借りているなら、家具はあまり買い替えない方がいいと思います。そのうえで、「良い椅子」を一脚買う。例えば、有名なデザイナーズチェアを一つ部屋に置くだけで、部屋全体がすごく良く見えることがあります。

昔から、リートフェルトの赤・青・黄色の椅子が大好きなんですけど、あれは見た目は最高でも、日常的には座りにくい(笑)。有名なマルセル・ブロイヤーの椅子とかポール・ケアホルムとか、ああいう名作椅子も格好いいんですけど、人と会話しにくかったりする。

大学の部屋にあったので持ってきて、「おお、かっこいい」と思ったんですけど、座ってみたら「こういう姿勢でしか話せない」とか。今使っているのは、ハンス・ウェグナーのハイチェアで、あれはちょうどいい。人が来たときにも話しやすいし、一人で本を読むにも、仕事をするにも向いている。心地よく本が読める世界を作るのは、すごく大事だと思います。

Q24. シティボーイにおすすめしたい本は?

意外と、今でもよく考える本は、Glen O’Brienの『How to Be a Man』ですね。『POPEYE』にも連載されていた人です。Glen O’Brienは昔、『GQ』で「Style Guy」というコラムを書いていて、その連載は全部読んだと思います。その知識が、今でも頭の中で参考になっています。

『How to Be a Man』は、「センスが良くてテイストのある紳士になるには、どうしたらいいか」をきちんと教えてくれる教科書みたいな本です。あの本は、彼が亡くなる前に書いた本でもあって、「老い方」「死に方」についても書いてある。よくグルーミングの話が出てくるんですけど、「年を重ねると、いろんなところから毛が生えてくるから、それをちゃんと整えなきゃいけない」とか。それが、すごく具体的で面白い。

Glen O’Brienは、ちょっとパンク的なシティボーイみたいな人たちが老人になるまでを見てきた人で、本当に特別な視点を持っていると思います。それまでのマナー本を書いていた人たちは、多分ずっと「子どもの頃から紳士」のような、クラシックな人たちだったんですよね。

でも彼は、アートの世界や、バスキアと友達だったり、音楽やメディアの世界にも関わりながら、ファッションの世界にもいた人。そういう人がマナーの本を書いたからこその面白さがあって、「保守的ではないマナー」の本になっている。今の時代にもすごく通じる本だと思います。

Q25. ファッション的な観点から見て好きな映画、もしくは好きなミュージシャンやアーティストはいますか?

音楽は、いろいろ聴きます。でも、スタイルに合う音楽という意味では、やっぱりジャズですね。日本はそれをよく分かっていて、いい喫茶店に行くと絶対ジャズが流れています。ビールスタンドとか、クラフトビールの店に行くとジャズが流れていたり。多分、アメリカでジャズが流れている店はそんなに多くなくて、日本の方が「ジャズ=おしゃれなBGM」という意識が強い気がします。僕が普段聴いている音楽は、サウンドとしては良いけれど、ビジュアルにしたときそこまでおしゃれではない(笑)。それがちょっと不思議なところですね。

具体的なプレイヤーで言うと、Ornette Colemanとか、もちろんMiles Davis。エレクトリック時代のマイルスもよく聴きます。アートで言えば、20世紀初頭のモダンアートの作家たちも、洋服の意味でとてもおしゃれです。昔の写真を見ると、みんなスーツを着ている。アーティストなのに、スーツを着ているのがすごくかっこよくて。当時はスーツが完全に「制服」だったからなんですけど、それでも、20世紀初頭のアーティストたちは本当におしゃれだと思います。「若者の中の自由さ」と、「ちゃんとしたビジュアルを自分の体で作る」という、その塩梅が好きなんです。バスキアも、Tシャツやジーパンのイメージが強いけれど、スーツを着ているときはめちゃくちゃかっこいい。逆に、アーティストがいつもTシャツとジーパンだと、ちょっと残念な気がします。

Q26. 「都会的」な印象を受ける映画やドラマはありますか?

映画だと、Whit Stillmanという監督がいて、一番大事なのは『Metropolitan』という作品です。80年代末か90年くらいの映画で、ニューヨークのデビュタント・ボール——若い女性が社交界デビューする舞踏会——を描いているんですが、舞踏会そのものはほとんど映さない。その後のパーティーで、友達同士が集まって、プレッピーな若者たちがインテリっぽい会話をしている——そんなにワイルドな映画ではないけれど、すごく「ニューヨークらしい」映画です。

次の『Barcelona』は、スペイン・バルセロナでの、ちょっと良い生活を描いたような映画。その次の『The Last Days of Disco』は、ディスコ時代のニューヨークを描いていて、あの時代のニューヨークも本当にかっこいいです。伝統的な服を着ているプレッピーたちが、まだ街にいた最後の時代という感じで。

Q27. 理容室の使い方を教えてください。

だんだんペースが早くなってきました。白髪が増えると、髪の毛をコントロールしにくくなってきて、髪型をキープするのが難しくなるんですよね。昔は2ヶ月に1回だったのが、今は6週間に1回、1ヶ月ちょっとくらいのペースです。2004年か2005年くらいから、ずっと同じ人に切ってもらっています。僕はいつも同じような髪型を頼んでいるつもりなんだけど、昔の写真を見ると微妙に違っていて。彼がちゃんと時代を分かっていて、その時代に合うバランスにしてくれているんだと思います。

オーダーの仕方は、さっきの建築やスーツと一緒で、あまり細かく指定しない。「サマーカットにするか、しないか」くらいですね。サマーカットは、真夏で暑いときに、襟足やサイドを少し短くしてもらうくらい。次の予約は、その場では取らないですね。それができる人は大人だなと思うんですけど(笑)。

グルーミングで愛用している道具は、毛抜きです。これがないと、本当に不安になる。資生堂の金属製の毛抜きを使っているんですけど、あれが奇跡的に良い。他の毛抜きもいろいろ試したんですけど、全部ダメ。資生堂のやつが、世界で一番いい毛抜きだと思います。多分3000円くらいするんですけど、定番商品で、いつも売っています。娘が一時期それを持って行ってしまって、部屋から消えたので、「なくなったかな」と思ってもう一つ買ったら、最初のやつも出てきて。今はちゃんとバックアップもあります。僕は眉毛がつながりやすいので、間の毛を抜かないといけない。だから、毛抜きは毎日使っています。

Q28. 愛用のペンとノートは?

ペンは、今までずっと「これが一番」と言えるものが分からなかったんですけど、最近は〈ZEBRA〉の「SARASA 0.4」に落ち着きました。どこでも売っていて、完璧なペンです。0.3や0.5も使ってみたんですけど、0.4がちょうどいい。コンビニでも売っていて、100円か200円くらい。替え芯も安い。大好きです。高級な万年筆とかも持っているんですけど、「SARASAより書きやすい」と思ったことは一度もないですね。ノートは、そこまでこだわりがなくて、普通に手に入るものを使っています。

Q29. 仕事と関係ない趣味はありますか?

音楽を作るのが好きです。ピアノは弾けるけど、すごく下手です。コロナの時期に、クラシックをちゃんと練習し直そうと思ったんですけど、どうしても同じところで間違える癖があって、あまり上達しませんでした(笑)。プレイヤーとしてよりも、作る方が好き。昔はロックっぽいものも作っていたんですけど、今はすごくミニマルなハウスっぽい音楽を作っています。ノイズみたいな音を録音して、それをPro Toolsに入れて、サンプラーやシンセサイザーで加工して……みたいな感じですね。

Q30. 好きな移動手段、乗り物は?

電車ですね。恥ずかしいくらい、電車に乗ってます(笑)。「すみません、デイビッド・マークスさんですよね?」と声をかけられることもあって。背が高いので、目立つんですよね。新幹線も好きなんですけど、最近はすごく混んでいて、飛行機みたいな感覚になってきたので、ローカル線の方が好きです。

あと飛騨の「ワイドビュー」みたいな、そんなに速くない特急が最高です。昔、「北斗星」で上野から札幌まで行ったことがあって、あれはいろいろ大変だけど、本当に特別な体験でした。自転車も好きですけど、今は小さい自転車しか持っていなくて、肩がすぐ痛くなるので、あまり乗れていません。

Q31. 小腹を満たしたいとき、家で何を食べますか?

僕、本当に砂糖中毒みたいなところがあって(笑)、甘いものが大好きなんですけど、「あまり食べちゃいけない」と自分に言い聞かせて生活しているんです。お腹が空くと、どうしても甘いものを食べたくなるので、そうじゃないものとして、ピーナッツとか、すごく地味なクラッカーを買っておいて、それをつまむようにしています。

北軽井沢に行くと、「バナナペッパー」という特別な、あまり辛くない唐辛子があって、色がさっき話したマドラスチェックのシャツみたいなんですが(笑)。 あれをピクルスにするんです。サラミがあるときは、サラミにそのピクルスを挟んで食べる。最高においしいです。

Q32. 友達の家に行くときの定番の手土産は何ですか?

お酒が多いですね。お酒か甘いもの。特定の酒屋は決めていなくて、便利なところで買います。ワインが多いです。僕はワインに全然詳しくないんですけど、手土産としての見た目はいいから、無理やりワインを買う(笑)。本当は、もう少し定番の手土産を持てるようにならないと大人じゃないな、とも思っていて、この辺はまだ課題ですね。

Q33. つい集めてしまうものは?

古い雑誌と古い本ですね。本当に多すぎると思います。リビングにも図書室にも本棚がいっぱいあって、地下室にも本棚と段ボール箱がびっしり。この間、無印良品で大きな引き出しを買ったんですけど、その中身も全部本です。まだ増え続けています。

だから、正直今はあまり買い物が面白くないんですよ。お金持ちという意味ではなくて、「物がありすぎて、全部使い切れない」ことがストレスになってきた。ジャケットも、いいジャケットはいっぱいあるのに、全然着ていないものがある。本も、積読がストレスになる。それ以上ストレスを増やしたくないから、新しいものをあまり買いたくない。

今年の夏、一ヶ月前くらいかな、1週間のうち3日、夕方4時からずっとバーでお酒を飲んでいたんですよ。「これはよくないな、アル中とあまり変わらないじゃないか」と思って。でも分かったのは、「暑いとき、何をすればいいか分からない」ということ。コーヒーは3時半までしか飲まないルールにしていて、それ以降はカフェインがダメ。暑いし、買い物もしたくないし、その時間帯に涼しい場所で時間を潰そうと思うと、バーしかない。今はもっと「歩く」「散歩する」みたいな健康的な過ごし方をしたいんですけど、バーにいると全然歩かない(笑)。 涼しい場所を探すと、ついバーに入ってしまう。

Q34. 服は捨てますか? それとも誰かに譲りますか?

服を捨てるのは本当に嫌いです。息子が今17歳なんですけど、ちょうど僕の昔のサイズで、僕よりも少し痩せている。僕が太って着られなくなった服を全部あげると、彼にはちょうどいい。それがすごく良い循環になっていて、彼はあまり服を買う必要がない。降る(売る)こともほとんどしないので、本当に溜まっていく一方ですね。

Q35. 定期的に通うお気に入りの旅先はありますか?

最近は北軽井沢が多いです。昔だったらフィンランドとか、カナダのバンクーバーとか、北海道とか。涼しい場所が大好きです。現地では、何もしないのが理想です。家族と一緒に行くと、特に姉や兄と一緒のときは、みんなが「今日何する? 朝はこれをして、午後はここに行って……」と予定を立てたがるんですけど、僕は何の予定も欲しくない。

「理想的な夏休み」は、北海道のどこかに行って、ドライブするだけ。涼しい場所を車で走る、それだけでいい。日本国内旅行も大好きで、知らない街に行って古本屋を探したり、いい喫茶店を探したり、いい定食屋を探したり。あと普通に道を歩く。たまに美術館や博物館に行くこともあるけれど、一番大事なのは「街を歩くこと」です。日常の延長みたいな旅が好きですね。

Q36. 旅行に持っていくこだわりの持ち物は?

〈Filson〉のダッフルバッグみたいなデイバッグを持っていて、3日間くらいの荷物が入るんですけど、やっぱり重いので、肩が痛くなります。ガラガラのスーツケースも使いますが、「これは絶対持っていく」という自慢できるようなトラベルグッズはあまりないですね。

あと、アメリカやヨーロッパだと、睡眠薬。時差ボケを早く治したいんです。僕なりの治し方があって、「メラトニン」や「ユニソム」みたいな、処方箋なしで買える薬を使います。蜂に刺されたときに飲む薬と同じくらいの強さで、そこまで怖くない。それを夜10〜11時くらいに飲んで寝て、朝6時に起きる。それを2回やると、時差ボケがほぼ治ります。睡眠薬は、海外に行くときの「必需品」ですね。

——靴は何足ぐらい持っていきます?

靴はどこにいくかで変わりますが、シンガポールに行ったときは4足持って行きましたスニーカー、フォーマルなローファー、ボートシューズ、ジム用のスニーカー。シンガポールは暑いので、街でたくさん歩くのは難しい。なので、ホテルのジムに行こうと思って、ジム用スニーカーも持って行きました。毎日20キロくらい歩くから、それで十分な運動になります。東南アジアだと、水着も必須ですね。プールがあれば、絶対に入りたい。

Q37. 海外でシティボーイにおすすめしたい店はありますか。

ニューヨークの本屋「Strand Bookstore」が大好きです。すごく大きな本屋で、新刊も古本も何でもある。よく夢の中で、急にニューヨークにいて、古本屋に行きたくなるという夢を見るんですけど、そのときに行くのはだいたい「Strand Bookstore」ですね。ニューヨークでは、古本屋と好きなダイナー——ニューヨークにしかないような、時代感のあるダイナーが大事です。

洋服は、ほとんど東京で全部買えてしまうので、海外でわざわざ服を買う必要がない。このあいだパリに行ったときも、「お土産に何か買おうかな」と思っても、全部日本にもある。日本にないものを探す方が大変で。食べ物も、どのくらい持って帰れるか微妙ですし。

上海だと、「Fairmont Peace Hotel」。かなり古いホテルなんですけど、最上階のバーからの景色が最高です。上海は大好きです。仕事でもプライベートでも行ったことがあります。古いビルが多くて、ヨーロッパ風だけど、ヨーロッパとも違う。東京と神戸を混ぜたような雰囲気ですね。

Q38. 好きな喫茶店は?

僕は、喫茶店と定食屋、洋食屋が大好きです。「純喫茶」という言葉がありますけど、僕が好きなのは、あまり「純」の看板を掲げていない、普通の喫茶店。全然かっこつけていない喫茶店が好きです。よく行くのは、「ばじりこ」。TikTokとかに出てくるような喫茶ではなくて、昔ながらの普通の喫茶。だんだん、そういう店が少なくなってきていますね。

神田の「エース」は本当に大好きで、よく朝ごはんを食べに行っていました。ミーティングもよくそこでして、『POPEYE』でも何度も取材したんですけど、ある日突然なくなってしまった。本当にショックでした。

銀座の「ルパン」というバーも大好きです。ただ、あそこは観光客と太宰治ファンと常連が全部混ざっていて、そのバランスが難しい(笑)。文豪ストレイドッグスのファンみたいな人たちも来るので、太宰治ファンじゃない客として行くと、扱いがすごく良い。よく行くようになると、ちゃんと常連扱いをしてくれる。

でも、オーバーツーリズムで、どの店も大変ですよね。このあいだ「ばじりこ」の前を通ったら、すごい行列ができていて、なんだろうと思ったら、抹茶ミルクか何かのドリンクスタンドで、50人くらい並んでいました。東京は、「すごく並ぶ店」と「全く並ばない店」が極端になってきていますね。

昔は、予約しなくても軽く入れる店が多かった。今は、ちょっとロシア料理のランチに行こうと思ったら、開店5分後で50分待ち、とか。そういう、戦略がないと入れない店が増えてきて、嫌だなと思うこともあります。だから僕は、自由な日にあえてメジャーじゃない街に行くのが好きです。

Q39. ずっと買い続けている日用品や食品は?

アメリカに行くときは、「Crest」という歯磨き粉を6本くらい買ってきて、一年分として使っています。「Crest」が好きで、特にマウスウォッシュと、歯を白くする成分が入っているシリーズ。日本の歯磨き粉は、あまり好きじゃない。

髭剃りは、フェザーの替え刃を入れるタイプのカミソリも使っているんですけど、固定式の、すごく安いプラスチックのカミソリも好きです。今は固定式がだんだん減っていて、動くヘッドのタイプが主流ですけど、安い固定式のカミソリを見ると、まとめて買っちゃいます。ドン・キホーテとかで、たまに見つかるんですよね。

Q40. 朝のルーティンは?

朝6時に起きて、絶対にコーヒーを飲みます。平日はコーヒーメーカーで、すごく普通のアメリカンコーヒーを作ります。「MJB」とか、どこにでも売っている緑の缶のやつ。週末は、ドリップで、もう少し良い豆を使います。

前は、パンと卵と肉——ベーコンかソーセージ——みたいな朝ごはんだったんですけど、最近は炭水化物の少ない朝ごはんを探していて、やっと見つけたのが台湾の豆乳スープです。甘くない豆乳スープで、最近はよく朝に飲んでいます。ちょっとドロドロしていて、お腹がいっぱいになるし、タンパク質ばかりなので健康的かなと。黒酢を入れて温めて、ネギや野菜も入れて、パクチーがあればパクチーも。トーストにごま油を塗って一緒に食べることもあります。

オムレツも好きなんですけど、バターの量が多くなりがちなので、そこは気をつけています。昔、『アメトラ』を書いていた頃はそんなに時間がなくて、グラノーラを山ほど食べていたんですが、ダイエットをしようと思ってカロリーを調べたら、一杯で750キロカロリーくらいあって(笑)。「これはダメだ」となってから、砂糖の入っていないグラノーラを試してみたけど、あれはあれでつらいですね。

Q41. 好きなパン屋はありますか。

新しいパン屋だと、日本橋にある「ビーバーブレッド」が好きです。古いパン屋だと、昭和っぽいパン屋なら何でも好きですね。惣菜パン——卵サンドや焼きそばパン——はあまり食べませんけど、ピーナッツバターコッペパンみたいなものは大好きです。

浅草の「ペリカン」も好きで、あそこは食パンとロールパンしかない日もあって、「今日はロールしか残っていません」と言われると、「じゃあロールください」と。選択肢が少ないのも楽しいですね。

Q42. 好きな喫茶店は?

神保町だと、「ブラジル」「ミロンガ・ヌォーボ」「ラドリオ」「神田伯剌西爾」など、選択肢がたくさんあって、どこもよく行きます。やっぱり「純喫茶的な空気」が大事ですね。

Q43. お気に入りの街と、その街の中での「はしごルート」はありますか?

最近は、東東京が好きですね。例えば、浅草橋で総武線を降りて、そこから歩いて蔵前、田原町、時間があれば浅草や合羽橋まで歩く。別の日は、根津や日暮里から上野まで歩くとか。天気がいいと、20キロくらい歩くこともあります。

家族と歩くこともあるけど、たいていは一人か、散歩が好きな友達と一緒です。最後は銭湯に入って、ビールを飲んで終わる。銭湯はだんだん少なくなっているけど、東東京にはまだ良い銭湯が残っていて、よく行きます。

Q44. 週末の過ごし方は?

やらなきゃいけないことが多いんですよね。犬の散歩をしなきゃいけないとか、ランチを用意しなきゃいけないとか。だから、本当に丸一日何もない日があれば、散歩をします。冬でも、ひたすら散歩。

この間のゴールデンウィークですごく天気のいい月曜日があって、その日は何の予定もなかったので、自分の庭にテントを張って、その下で本を読んでいたんです。最初の30分くらいは、「これ最高だな」と思いながら読んでいたんですけど、13時半くらいになって、「あれ、自分は東京に住んでいるのに、庭のテントの下で本を読んでいるだけって、もったいなくないか」と気づいて。それで、「すみません、東京に行きます」と自分に言い聞かせて(笑)、電車に乗って街に出て、散歩しました。

夏以外は、本当に東京を散歩したい。散歩は運動にもなるし、勉強にもなる。毎回、何か面白い発見があります。本当に何の目的もない散歩が好きで、あまり行ったことのないエリアに行きたいんですけど、だんだん難しくなってきました。ほとんどの場所には一度は行ったことがあるので。

でも、ときどき「牛込柳町」みたいな、自分でも何があるのかよく分からない駅を見つけて、「じゃあ行ってみよう」と。そういう、ちょっと微妙な場所にあえて行くのが好きです。散歩のときの格好は、ポケットの多いジャケットに、スニーカーとルーズなパンツ。ラガーシャツかフリース。手ぶらです。ノートやカメラを必ず持つわけではなく、今日みたいに薄い本を一冊だけ持って、喫茶店に入ったときに読むくらい。あとは街を観察するだけですね。

Q45. あなたにとっていいお店の条件とは?

一番大事なのは、やっぱり「雰囲気」です。特に古いインテリアの店が大好き。銀座のルパンとか、帝国ホテルのバーとか。昔からあまり変わっていない場所が好きですね。神谷バーというバーも好きで、今ちょうどそのバーについての本を読んでいるんですけど、今の内装は50年前とは全然違うはずなのに、照明の感じがあまりムーディになりすぎていなくて、すごくいい。週末に行くと、本当に地元の人ばかりで。よく言われているような観光客向けじゃ実はない。そういう雰囲気も好きです。

Q46. 都会的でスマートな振る舞いとは?

例えば、「交通の一番いいルート」が自然にわかっていること。「このあと上野に行かなきゃいけない」となったとき、すっと「じゃあ日比谷線で各駅に乗って……」とルートが浮かぶとか。

Q47. 「東京らしさ」を一番感じる場所は?

やっぱり銀座ですね。若い頃に日本に来たときは、銀座が嫌いでした。20代だと、お金がないと意味がない街なんですよ。でも今は、ルパンみたいなバーもあるし、バーのはしごをしていると、「ああ、自分は東京にいるんだな」と強く感じます。

帝国ホテルも同じです。帝国ホテルのバーによく行くようになって、『POPEYE』のおかげで、1階のランデブーラウンジの良さも分かってきました。昔は「めちゃくちゃ高い」と思っていたんですけど(笑)、ホテルがなくなるかもしれないと知って、「今のうちにちゃんと楽しもう」と考え方が変わりました。

このあいだ、ミーティングで行ったときは、2人でコーヒーを飲んで5000円でした。でも、「ここでこういう時間を過ごせて良かった」と思えるようになった。東京らしさを一番感じるのは、銀座〜有楽町〜東京駅あたりですね。東京らしさって、ちょっと古いものが残っているところにあると思います。

でも、「東京らしい場所」は一つだけじゃない。代々木上原にはおしゃれな店があって、イスラム教のモスクもある。それも東京っぽい。蔵前にはおしゃれなカフェがあって、変な文房具屋やパン屋もある。それも全部東京。

銀座はその中の一つだけど、「江戸」ではなく「東京」の歴史は、やっぱり銀座に集中している気がします。浅草は「江戸」という感じですね。僕は日本人でも東京出身でもないので、いまだに「自分は東京に住んでいるんだ」という意識が強くて、その感覚を一番強く感じるのが銀座なんです。観光ともちょっと違う感じというか。観光客は、さっき話したようなバーや喫茶店には、あまり入ってこないですからね。

Q48. 定期的に通っている店や場所はありますか?

神保町の古本屋には、月に1回くらい行きます。それから、北沢書店という、すごく良い英語の古書店があって、2階にあるんですけど、そこにもよく行きます。お茶の水から10分くらい歩いたところに、「近江屋洋菓子店」というパン屋兼、和菓子屋兼、洋菓子屋があって、その近くに、今は閉まってしまいましたが、「ショパン」という喫茶店があったんですけど、あの辺もすごく好きです。

Q49. シティボーイのために残したい文化遺産は?

本当に残念なんですけど、さっき話した神田の喫茶「エース」は、まさにそういう存在でした。あれは、気づいたら急になくなっていて、誰も救うことができなかった。「はい、今日で終わりです」という感じで。

帝国ホテルのバーも大好きなんだけど、あれはどちらかと言うと「シティボーイ向け」ではなくて、大人になってから行く場所ですね。残したいのは、若い子でも行けるような、「インスタ映えじゃない店」。そういう場所が、だんだんなくなってきているのが本当に残念です。

日本は、すごく古いものはちゃんと保存するけれど、50〜60年代くらいのものは、あまり価値がないと思われてしまう。店をやっている本人も、「自分がリタイアしたら終わりでいいや」と思っている。気がついたら、表参道の「蔦」という喫茶店もなくなっていたり。そういう、急になくなって消えていく店がすごく多いですよね。だから、文化遺産として残したいのは、やっぱり神保町の喫茶店かなと思います。

Q50. あなたがシティボーイだと思う人物は誰ですか?

僕はこの雑誌の歴史をよく知っているので、『POPEYE』という雑誌を作った小林泰彦さんと石川次郎さんこそ、シティボーイだと思っています。創刊当時、お二人は30〜40代だったはずです。20代向けの雑誌を作っていたけれど、作り手は40代。でも、心は常に「世界の最先端の文化を知りたい」という気持ちでいっぱいだった。その「どの都市にいても、どの年齢でも、最先端のカルチャーを知りたい」という感覚こそが、シティボーイの一番大事な部分だと思うんです。

『POPEYE』は一応20代向けの雑誌とされているけれど、50歳の人が読んでも全然楽しめる。そんな雑誌は、ほとんどない。「少し古いものを、若い読者に紹介する」というスタンスだからこそ、10代、20代、30代、40代、50代まで、いろんな世代が読める雑誌になっている。シティボーイとは、いつも「なんとなく新しい情報を欲しがっている人」だと思います。

昔、『POPEYE』が創刊された頃、海外の最先端情報を欲しがる人は少なくて、それを届けるメディアは『POPEYE』しかなかった。今は、ある程度TikTokやInstagramが、その役割を一部担っているかもしれない。でも、全然違う。『POPEYE』で「いい」とされるものと、インスタ映えするものは全然違いますよね。そこには、「センス」というフィルターがあるからです。センスのある編集者が、センスを磨きたい読者のためにものを紹介する。

シティボーイという存在を最初に形にしたのは、やっぱり編集者たちだと思います。だから、シティボーイは、ある意味「編集者」なんです。ただの消費者ではなくて、世界のいろんなものを知りたくて、その中から自分のアイデンティティを作るためのパーツを選び取っている人。世界を、自分なりのメディアとして編集している人たち。この雑誌で、「編集」というテーマで特集を組んだことがありましたよね。

あれは、まさにシティボーイのことを語っていたんじゃないかなと思います。今どきのファッション誌は、芸能人や有名な読者モデルに頼って誌面を作ることが多いけれど、『POPEYE』は最初から「編集者の色」が強い。シティボーイは、その編集者のセンスを学んで、自分の生活に生かしている人たちなんじゃないかなと思います。

2026年6月23日

interview & text:

POPEYE ONLINE STORE

6月30日までオープン!