ポパイ五十周年
インタビュー集

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POPEYE 50周年記念インタビュー

Jun Takahashi

プロフィール

高橋 盾

UNDERCOVER デザイナー

たかはし・じゅん|1969年、群馬県生まれ。文化服装学院に在学中の1990年に〈UNDERCOVER〉をスタート。2002年にパリのファッション・ウィークに初めて参加し、コレクションを発表し続けている。独学で取り組んできた油絵の創作も続け、近年、国内外で個展を開催してきた。

Q1. あなたと『POPEYE』の関わりは?

80年代、中学生や高校生だったころから、なんとなく見ていたと思います。

『POPEYE』のベースは、アメカジだと認識していて。その一方で、僕自身はアメカジを通ってこなくて、どちらかというと、そういうスタイルから離れたところにいたというか。自分のスタイルとは、ちょっと違うと感じていました。とはいっても、ファッションのジャンルとしてはやっぱり面白い部分があるので、付かず離れずといった距離感ですね。

Q2. シティボーイと聞いて最初にイメージする服やものは?

これは『POPEYE』かな。自分にとってはあまりなじみのない言葉だけど、シティボーイ=『POPEYE』発信というイメージがあります。

Q3. あなたのワードローブに欠かせないTシャツは?

ずっと着続けているのは、“Picasso”とプリントされているTシャツ。ピカソのあの手書きのサインがプリントされたものです。新品で買ったことは覚えているけど、どこで買ったのかはまったく思い出せない(笑)。ピカソが好きということもありますが、文字だけでシンプルでありながら、若干、着るのが難しい絶妙な感じも、かえって気に入ってます。『ゲルニカ』の絵がプリントされたTシャツも、よく着ている一枚です。

他には、映画の『PSYCHO』のタイトルがプリントされたTシャツとか。確か94年だったか、ロサンゼルスの「ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド」に行ったときに買ったもので、これも、もうとんでもない色落ち具合になってる(笑)。

ここ何年かは流行りすぎてしまって着ていないけど、ブルース・ウェーバーのフォトプリントも何枚か持っていて、以前はよく着ていました。これは発売当初に『ア ストア ロボット』で買ったものです。
最近は、無地のTシャツを着ることも、ちょっとずつ増えてきましたね。

Q4. あなたのワードローブに欠かせないシャツは?

よく着ているのは、自分のブランドのシャツです。昔のものも、新しいものも着ています。それもプルオーバータイプが好きで、たまたま入ったショップでも、プルオーバーで無地のシャツを見つけると買うことがある。しかも、襟が付いていない、ノーカラーのものばかりです。

フルオープンのシャツは、ここのところ着ていないかな。襟に関しても、デザインするのはもちろん好きなんだけど、なんとなく自分には似合わない気がして(笑)。カチッとした格好をする機会もほとんどないから、なおさら、シャツのボタンは途中まであればいいし、襟はなくていいと思うのかもしれない。

Q5. シャツの袖をまくるのは好きですか?どのようにまくるのがしっくりきますか?

好きですね。この辺(手首が10cmほど見えるくらい)まで、ピシッとさせずにまくります。それも、カフスにあるボタンを全部留めてから、ちょっとずつまくる。誰かに教わったわけでもないのですが、いつもそうしています。

Q6. シャツの胸ポケットには何を入れる?

何も入れない。入れるとしたら眼鏡だけど、まず使わないです。ポケットそのものは大好きで、ジャケットなんかのポケットには携帯電話を入れたりもするけど、シャツの場合は、重いものを入れたくないので。

Q7. あなたのワードローブに欠かせないスウェットシャツやパーカは?

いっぱいあるけど、スウェットシャツだったら、Tシャツと同じようにピカソの『ゲルニカ』の絵がプリントされたものとか。最近では、ドイツのジャズレーベル〈ECM〉のロゴが大きく入ったスウェットを、ネットで見つけて買いました。

パーカは、自分のブランドでいうと、たとえば映画の『A CLOCKWORK ORANGE』(時計じかけのオレンジ)のタイトルをプリントしたもの。他には、どこかがライセンスを取って作ったものだと思うけど、“A STANLEY KUBRICK PRODUCTION”とプリントされたパーカもよく着ています。シンプルなタイポグラフィーだけのプリントは、特に好きですね。

今は、パーカもプルオーバーばかり着ていますが、以前はジップパーカもよく着ていました。赤の無地で、裏地がサーマルになった、本当になんてことない古着でしたけど。ジップパーカも、好きなアイテムのひとつです。
アトリエから近い葉山マリーナで売っていたヨットクラブのパーカなんかも、このごろは着ています(笑)。そのパーカのように、たまたま見つけて買うことも多くて。スーベニア(記念品・お土産)系も、僕はかなり好きです。

Q8. あなたのワードローブに欠かせないジーンズは?

ジーンズは、基本的に〈リーバイス〉の501。10代のころから、ずっとですね。もう2、3本しか持っていないけど、いまだに穿いている。昔は激しくダメージの入ったものも穿いていたけど、今はそういうものではなくて、色落ちしていても割ときれいなものです。他には〈シュプリーム〉のブラックジーンズがあるはずで、ずっと探してるんだけど、どこにも見当たらなくて(笑)。

ジーンズは、作るのも面白いですね。自分たちの場合は、オーセンティックそのものという服を作るのではなくて、何かしらのひねりを加えるので。そのひねり方や加減によって、どこに着地するかが大きく変わってくる。デニムは、そうした効果が出やすくて、とてもやりがいのある素材だと思います。

Q9. ジーンズ以外で、あなたのワードローブに欠かせないパンツは?

〈リーバイス〉のコーデュロイパンツもよく穿いているけど、夏場はずっと、リネンのパンツを穿いています。リネンじゃなければシルクとか、涼しい素材のものばかり。それも、ゆったりしたシルエットで、ウエストにゴムが使われていたり、ドローコードが付いていたりするタイプ。短パンも、リネン素材のものが多いですね。他には、〈ポール ハーンデン〉の柄物の短パンなんかも穿いています。

Q10. あなたのワードローブに欠かせないシューズは?

レザーシューズだったら〈ドクターマーチン〉かな。〈UNDERCOVER〉とのコラボレーションで作った短靴のタイプ。マーチンは、履いていて本当にラクで、スニーカーに近いような感覚です。最近のものだと、〈ジョージ・コックス〉とコラボレーションしたシューズも、驚くほど軽くて快適。〈GUIDI〉と作ったブーツも履いてますね。

だいぶ前にリリースされたものだけど、ラフ・シモンズが手がけていた〈ジル・サンダー〉が〈チャーチ〉に別注したプレーントウのシューズも、すごく気に入っていて、ブラックとダークブラウンを持っている。これも信じられないくらい、履き心地がいいです。

スニーカーは〈VANS〉、〈ナイキ〉、〈ニューバランス〉とか。特にこのモデルということもないけど、ブラック1色だったり、ボルドー1色だったり、色数が抑えてあるほうが、自分のような年齢になると履きやすいのは確か。ただ、実際に履くかどうかは別として、最新のモデルをチェックするのは好きですよ。スニーカーは、特にそういう傾向があるかもしれない。

Q11. あなたのワードローブに欠かせないスーツは?

スーツを着るのは、どうにも苦手で……。カチッとしたものは着ない。着るとしたら、〈the Shepherd UNDERCOVER〉のちょっとナローなシルエットのスーツかな。そもそもこのレーベルは、自分が着たい服を作るために始めたものですしね。

Q12. あなたのワードローブに欠かせないソックスは?

ソックスも〈the Shepherd UNDERCOVER〉です。夏は短いタイプ、冬は長いタイプ。でも、夏はアトリエ近くの海に行く機会も増えてビーサンばかりだから、ソックスを履かないことも多い。真冬になったら、〈nonnative〉のウールのものも履きます。とにかく僕は冷え性で、足もとが冷えやすいので(笑)。

〈the Shepherd UNDERCOVER〉のソックスは、土踏まずの周りをリブにして、ズレにくくしたりしていますが、カラー展開も含めてベーシックなものです。

Q13. あなたのワードローブに欠かせないアンダーウェアは?

以前、〈UNDERCOVER〉で作っていたアンダーウェアをずっと着ています。柄ものとか、ワンポイントものとか、いろいろあったんですけど、今はリリースしていなくて。これは、また作りたいですね。

服作りに関しては全体的に、履き心地、肌触り、軽さといったことが、自分の中ではキーワードになっているので。それを実際にどう取り込んでいくか。アンダーウェアも、さらに質のいいものを作っていきたいと考えています。

Q14. 夏のワードローブに欠かせないアイテムは?

夏はTシャツしか着ないです。他に欠かせないのは、木島(隆幸)さんと作ったストローハット(〈the Shepherd UNDERCOVER〉×〈KIJIMA TAKAYUKI〉)。風で飛ばされるのがイヤなので、このハットは軽すぎないように作っています。足もとは藤井(隆行、〈nonnative〉デザイナー)と一緒に作ったサンダル(〈OZISM〉×〈rig〉)や、〈HOKA〉のリカバリーサンダルなど。サンダルを履くことが多いですね。あとはサングラスかな。

Q15. 冬のワードローブに欠かせないアイテムは?

ほとんどダウンジャケットばかり着ています。特によく着ているのは、〈ノースフェイス〉とコラボレーションした〈SOUKUU〉で作った「ヌプシ」。〈UNDERCOVER〉だったら、『時計じかけのオレンジ』の主人公アレックス(マルコム・マクダウェル)が、拷問のような治療を受けている顔をプリントしたものとか。

同じく映画をテーマにしたものでいうと、『蜘蛛巣城』の最後で、矢に刺された鷲津武時(三船敏郎)が倒れ込むところをプリントしたダウンジャケットも着ています。色味も含めて、プリントが身頃になじんでいるので、一見、シンプルに見えるところも気に入ってますね。

ーーダウンジャケット以外を着ることもありますか?

最近着ているのは〈COMOLI〉のムートンジャケット。昨年、初めて小森(啓二郎)くんと会う機会があって、それ以来、一緒に食事とかに行くようになりました。このコートは、本人と会う前に、あるショップで見かけたのですが、そこですごい存在感を放っていて。実際に袖を通してみたら、半端じゃない気持ちよさだった。シンプルなつくり、一枚仕立てでめちゃくちゃ軽い。色はダークブラウンです。

ニットも一年の半分くらいは着ています。今日着ているニットは、ソニア(パーク)さんが手がけている〈アーツ&サイエンス〉のもの。よく着ていたから、ひじとかに穴が空いてしまって、そのときちょうど手元にあったパッチで補修してみたら、スタッフからも結構好評だった。結局、パッチでリメイク風にするというアイデアは、〈UNDERCOVER〉で商品化につながりました(笑)。そういうケースも結構あるんですよ。

以前は、ストールも欠かせないアイテムだったけど、最近は使ってないです。長めのコートばかり着ていた時期もありましたが、それも今は着ていない。ダウンジャケットのあまりの快適さには、やっぱり敵わないかな。ダウンジャケットに負けないくらい、軽くて暖かくて、肌触りも柔らかい、着心地が抜群のコートを作ってみたいですね。

Q16. その日に着るコーディネートは、どのアイテムから決めることが多い?

パンツであるとか、ニットであるとか、シューズであるとか、今日着るアイテムをどれか1つ決めてから、それ以外のアイテムやコーディネートを考えていく、というのが多いですね。その日によって起点が変わるというイメージかな。

自分たちが新しいコレクション、ファッションショーの準備を進めるにあたっては、まずテーマを決めた後に、1体目からフィナーレまで、登場順にコーディネートを決めていきます。それも口頭で、自分を含めて3人くらいで話しながら。

たとえば、1体目はこんなジャケットでどうかな、襟はこういう形で、素材はこうでと。そのジャケットに対して、パンツはこんな感じでどうだろう、というふうに、一点一点決めていく。それを最後のルックまで続けて、ひと通り決め終えてから、デザイン画を描きはじめる。いつも、そういうやり方です。よくわからないですよね(笑)。でも、コーディネートの決め方自体は、通じるところがあるような気がします。

Q17. フォーマルな場での身だしなみで大切にしていることは?

そもそも、フォーマルな場といっても結婚式くらいしか行かないけど、やっぱり苦手。フォーマルな、カチッとした格好というのも、どうしても苦手で。それでも、どこか自分らしさを出せれば……とは思いますけど。

Q18. 山やアウトドアに出かける際の着こなしで大切にしていることは?

今年の夏には、海の近くに引っ越すので、仕事以外のベースはそちらに移す予定です。その家からは、歩いて5、6分で海に行けるので、よりアウトドア的な環境にはなるけれど、この会社(神宮前)にいるときと、格好はそんなに変わらないかな。

ハードな自然環境の中に行く機会もないし、そこまでいろんな格好をしなくなってしまったのかもしれない。夏でも冬でも、タウンウェアとアウトドアウェアの間みたいなスタイルですね。

Q19. ファッションアイテムの中で、お金のかけがいのあるものは?

……ないですね。ファッションアイテムに、そんなにお金をかけたくない。時計くらいは欲しいものがあるけど、それ以外の服やアクセサリーに、むやみにお金をかけることは、まずないです。

そもそも、ここ何年も、自分が着る服には執着がなくて(笑)。もちろん、服を作ることは変わらず面白いし、全然違う向き合い方をしているんだけど。

“Picasso”とプリントされただけのTシャツを、いったい何年着てるんだ、って感じですしね。でも、極論すると、それだけでも済んじゃうから。服に高いお金をかけなくても、なんとでもなると思います。

これからは、できることなら、同じものをずっと着ていきたい。こだわりを持つなら、そこになるのかな。たとえば、伊丹十三がチャイナジャケットを好んで着ていたり、デヴィッド・リンチが白いシャツをいつも一番上のボタンまで留めて着ていたり、そういう変わらないスタイルには憧れがある。この人といえば、この服、という感じがいい。毎日着ることができる、自分にとって本当の定番と呼べる服を、ゆくゆくは作ってみたいです。

Q20. 長年にわたって手に入れたいと思い続けているファッションアイテムは?

ひとつだけ、今でも集めているものがあって。それが94年に発表された〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉の“オフビート・ユーモア”というテーマのコレクション。川久保(玲)さんのまさしく発明だと思いますが、縮絨という手法が駆使された服です。

当時、パリで発表されたショーの映像を見て、ものすごい衝撃だった。ランウェイではなくて、四角い会場に、体型も髪型もさまざまなサーカス団のおじさんとかが、ぎゅっと縮んだ服を着て、わらわらと登場して、いきなり宙返りしはじめたりする。いまだに、自分の中では一番好きなショーです。

このコレクションの服に限っては、発売当初からずっと買い集めていて。ブルゾンやニット、ベスト、パンツなど、たくさん持っているし、今でも着ています。まだ手に入れられていないアイテムがいくつかあるので、それを探していますね。

Q21. 古着店に行って、まずチェックするアイテムといえば?

スウェットとか、コーデュロイのものですね。特にコーデュロイは、新品で買うことはほとんどなくて、古着店に行ったら、ジージャン型のジャケットやパンツなんかを、まずは見ます。

そもそも、今では古着店に行く機会もそんなにないけれど、たまに行くと、一番目がいくのは色なんですよ。あれだけたくさんの色のさまざまな色落ち加減を、いっぺんに見られるのは古着店しかないので。とにかく色に目を奪われる。特にコーデュロイは、グレーとベージュの間や、黒とネイビーの間といった、絶妙な中間色が見つかります。

ナス紺やスミ黒といった少し褪せた色合いであったり。さらには、そういう色同士の組み合わせもたまらない。シャツのチェック柄なども、なにより色が気になる。古着を着るんだったら、やっぱり色で選びます。
服を作るうえでは、カラーリングがとても大事なので。古着の現物で確かめられる色というのは、すごく参考になる。インスピレーションにつながることもありますね。

Q22. 服のメンテナンスについて、特に大切にしていることや方法は?

ニットを着ることが多いので、除菌や消臭などができる「LGスタイラー」というクローゼットを、家に置いています。以前、タバコを吸っていたときは、服とかに匂いが移るのがすごくイヤで。特にニットは匂いがつきやすいので、そのケアで使っていました。

他には〈the Shepherd UNDERCOVER〉で作った、肌触りがすごく気持ちいいカシミヤのパンツがあるので、毛玉ができたら専用ブラシで取っていますね。アイロン掛けだけはどうしても嫌いなので、洗濯乾燥機にかけ終わったら、すぐに取り出して、広げておくとか。あとは、ご飯をよくこぼすので、シミ抜きかな(笑)。

Q23. あなたのワードローブの考え方に影響を与えたものは?

若いときはパンクな格好をしていたから、セックス・ピストルズであるとか、いろいろあったけど、今はまったくない。映画もよく観るけど、そこに映っているファッションにはあまり目がいかないというか、もっと違うところで楽しんでいるから。

たとえば『POPEYE』だったら、映画の中のウディ・アレンのファッションに注目するかもしれないし、確かに格好いいとは思うけど、やっぱり自分のスタイルとは違うわけだし、影響を受けるということはないです。

ーー音楽やアーティストについてはどうですか?

音楽に関しては、パンクや日本のロック、フォークに始まって、ジャズ、ジャーマンロック、アンビエント、テクノなんかも聴いたりするから、かなり幅が広くて。今、自分が着ている服を見ても、どんな音楽を聴いているかは、わからないと思うんですよね。特定の音楽の匂いがしないというか、いろいろ当てはまるというか。そういう格好でいたいとは思います。この人に影響を受けているとか、この音楽に影響を受けているとか、すぐに連想できてしまうような格好はしたくない。

オールマイティでありながら、その人にしかないところが絶妙にある感じ。いつか、そういうスタイルにたどり着くまで、自分でも模索しているのかもしれないですね。だからといって、そんなことをずっと考え続けているわけじゃなくて、自然にそうなればいいということだけど。

たとえば、誰も履いていないような、かなり風変わりなスニーカーを履いていても、なんだかお洒落に見えてしまう人もいる。まとめていない感じ、狙っていない感じというのが、僕はいいなと思います。結果的にお洒落に見えるのはいいけれど、お洒落をしようというマインドは嫌いだから(笑)。自然にこうなった、という落とし所が見つかったら、それが一番いいんじゃないかな。

Q24. 着なくなってしまった服はどうしますか?

どんどん、人にあげますね。惜しみなく、服は手放しています。

先ほど言った〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉のコレクション(1994-95AW “オフビート・ユーモア”)だけは集めていますが、もう〈セディショナリーズ〉も何も持っていないし、ずっと残しておこうというものは特にないです。

自分が持っている服は、まだそれなりの点数があるけれど、実際に今年の冬によく着ていたものなんて、数えるほどしかない。そういう服は来年も着るかもしれないから、ひとまずキープしておく、というくらいで。本当は、もっと減らしていきたいです。

Q25. お洒落は何のためにするのでしょう?

自分の欲求で、これが落ち着くという格好をしているので。いわゆるお洒落とも違うし、お洒落をしようとしているわけでもないです。ただ、そうはいっても、やっぱりこの服は格好いいなとか、あの服を着てくればよかったなとか、いろいろと思うわけだから、服装にはそれなりに意識が向いているのでしょうね。

その日の気分や、行動の予定にもよるけれど、この格好がしっくりくる、ということが自分にとっては一番です。

Q26. お気に入りの旅先と、現地での過ごし方は?

旅ともいえないけど、アトリエの近くの葉山、鎌倉、逗子あたりによく行くきます。完全にリラックスした時間で、海に行って、ただぼーっとしたり、犬を連れて散歩したりして。鎌倉も夜になると一気に人が減るので、たまに藤井(隆行)と焼き鳥を食べに行って、その後ちょっとスナックに寄ってみたり(笑)。そういうのが好きです。

ーーパリコレクションなど、海外に行くことも多いですよね?

海外だったら、今ではたまにしか行かないけど、ロンドンですね。街を歩いていても、なんとなく落ち着くし、リラックスできる。最近、初めてベルリンに行ったけど、めちゃくちゃよかったです。パリはずっとショーをやっていたから、もはや旅先という感じでもないんだけど、街はきれいだし、まあやっぱり好きですね。

Q27. 旅に欠かさず持っていく便利なものは?

〈スティーブ・ハリソン〉のマグカップを持っていきます。彼の作品をずっと集めているのですが、自分にとっては日常に欠かせない、とても大事なものとして確立されているので、旅先でも身近に置いておきたい。どこかお守りのようでもありますね。

彼のマグカップには木箱が付いてくるものもあって、それに入れて持ち運べるうえに、フタのほうはコースターのように使えるんですよ。どこかに長期滞在する場合には、2個持っていくこともあります。

Q28. お気に入りの東京の街は?

自分の中ではもう、東京を離れようとしているところだけど……。それでも、神保町は好きです。古書店街を覗いたり、そば屋に食べに行ったりもできるので。渋谷や原宿ではなくて、もっと下町のほうとか、たまたま行った先の普通の商店街とかに惹かれますね。下町といえば、江戸川区の西小岩にある「さあどあんくる」という、年代もののおもちゃ専門店に行くこともあります。

ーー「東京だな」と感じる場所はありますか?

東京らしい場所としては、ずっと、この神宮前あたりにいることもあって、表参道がやっぱり象徴的かな。他には銀座とか。群馬の実家から車で帰ってくるときに、東北自動車道から首都高に乗るんだけど、スカイツリーや高層のビル群が見えてきたときにも、ああ東京だなと感じることがあります。

Q29. お気に入りの美術館や博物館は?

常設の展示を見に行くというよりも、そのときに開催されている企画展に興味があったら見にいく、というケースがほとんどなので、特定のところはないですね。

このアーティストの作品をまとめて見てみようとか、基本的には、何か目的を持って行きます。しかも、じっくりと時間をかけて、集中して見たいほうなので。なんとなく流して見るというのは、ちょっと苦手かもしれないです。

Q30. お気に入りの書店は?

神保町でたまに行くのは『矢口書店』。映画とかテレビドラマの台本が好きで集めているから、そういうものを見に行きます。

中野ブロードウェイも大好きで、『まんだらけ』系の書店によく行っています。特に、一番上の階(4F)にある何軒かは、マニアックなセレクトがすごくて、めちゃくちゃ面白い。神保町だったら、いくつかの古書店に点在していそうな本や資料が、ぐっと凝縮されているような感じで。しかもわかりやすく整理されているから、見やすいですね。

Q31. お気に入りの飲食店は?

いっぱいありますよ。特にそばが好きなので、赤坂の『室町砂場』だったら天ざるとか、目黒の「武蔵野」は天丼と納豆そばが最高。葉山の先にあるアトリエの近くでは、秋谷の『桶や』にもよく行きます。鎌倉の長谷にある『鎌倉 北橋』のそばもおいしい。

鎌倉だったら他にも、小町通りから入ったところにある『朝ごはん』というお店は、焼き鮭定食が絶品。最近はかなり人気で、並ばないと入れないんだけど、開店が朝の6時半だから、そこを目指して行く(笑)。朝型の生活なので、それも平気です。

もっと近場で行きやすいところだと、代々木上原にある『jeeten』。中国の家庭料理がいろいろ食べられて、ここも本当においしいですね。

Q32. お気に入りの喫茶店やカフェは?

喫茶店も街で見かけなくなって、あまり行かなくなりました。

でも、逗子海岸の手前にある「なぎさ橋珈琲」だけは、本当にしょっちゅう行っています。朝の7時からオープンしていて、犬も連れて行けるし、とにかく、海の眺めがめちゃくちゃ気持ちいい。メニューはファミレスに近くて、ちょっとダイナーっぽい雰囲気があるというか。

5年くらい前に、近くにアトリエができてから通うようになったのですが、最初のころは、パソコンとデザインノートを持っていって、朝食をとりながらデザイン画を描いて、昼ごはんも食べて、またデザイン画を描いて、夕方になったら帰る、という生活を続けていました(笑)。自分の中では、間違いなく、世界のトップ10レストランとしてランクインする店です。

都内だと、犬の散歩の途中や、走った後などに、富ヶ谷にある『COSMOS JUICE TOMIGAYA』にスムージーを飲みに行くのが好きですね。

Q33. お気に入りのバーや居酒屋は?

今はお酒もほとんど飲んでないから、夜はめったに出かけないです。でも行くとしたら、逗子駅の近くにある『ざくろ』という居酒屋くらいかな。クラブなんかにもまったく行かないので、どこが盛り上がっているのかも、まるでわからないですね。

Q34. お気に入りの公園は?

やっぱり代々木公園かな。いまだに走り続けている、いつものランニングコースだから、これまでに何回行ったかわからない。あれだけの自然の中で、オフロードも含めて、自由に走れるところは、なかなかないと思う。

ロンドンなんかもそうだけど、都会の中心にいきなり広大な公園の自然環境がある、というのもすごく重要なポイントで。そういうところも含めて惹かれます。もちろん、砧公園とかもいい公園だと思うし、基本的に公園は好きですね。

Q35. この季節にはこれをする、と楽しみにしていることは?

夏は海の家に行くのが楽しみ。葉山の一色海岸にある『ブルームーン』というところで、いつもは7月1日から8月31日までの営業だから、6月後半になるともう、気持ちがそわそわしてきて(笑)。砂の上に椅子とテーブルが出してあるので、とりあえずビーサンを脱いで、素足になってくつろぐ。食事もいろいろあるから、みんなで食べたり、飲んだり、海に入ったり、ダラダラと過ごすのがたまらないです。

近場で花火大会やお祭りもあるし、夏はいろいろ行きますね。地元の群馬のお祭りも、楽しみのひとつです。

Q36. シティボーイのための、とっておきの旅先を教えてください。

シティボーイ向けかどうかはわからないけど、ベルリンで行った『Kitten Deli』というイスラエル料理のレストランが、めちゃくちゃよかったです。

市内を流れる川の近くにあるんだけど、食事がすごくおいしいだけじゃなくて、来ているお客さんがみんな格好よくて、自由な雰囲気があって。本当に今すぐにでも、もう一度行きたい。こんなにいい店があるなんて、ベルリンってうらやましいな、と思ったくらい(笑)。モロッコ料理とかも含めて、中東系の食事が僕はもともと好きなんですよ。

Q37. いいお店の条件とは?

自分が行く店って今はほとんど飲食店だから、おいしいことはもちろんだけど、照明がちょっと暗くて、店員さんの醸し出す雰囲気がいいことかな。こちらを放っておいてくれるけど、じつは気にかけてくれている。それぐらいの距離感がちょうどよくて、居心地もいいです。

それと、僕は少しクセのある人も好きだから。お店にそういう人がいて、ほとんどしゃべる機会がなかったとしても、なんだか面白いなとか、この店にまた来たいなとか思うことがある。それでいて食事がすごくおいしかったりすると、そのギャップでまたやられちゃいますね。

Q38. いい街の条件とは?

気取っていなくて、やっぱり居心地がいいことかな。僕は、商店街が好きなんですよ。商店街を歩いたときに、そこで暮らしている人や働いている人たちの人情味が伝わってくる。そういう街が一番いいですね。

Q39. あなたの好きな移動手段や乗り物は?

車です。運転そのものが好きですね。この夏に引っ越したら、完全に都内まで車で通うことになるので。それなりに距離もあるし、渋滞もあるだろうから、ちょっと気にはなりますけど。運転している間に考えを整理できたり、自分で作ったプレイリストで音楽を聴くこともできたりするし。

仕事をしているときにも音楽はかけているけど、じつは、それほど集中して聴いていないから。音楽をじっくり聴く時間が作れるというのも、自分にとっては大きいです。

Q40. 普段からしているスポーツは?

ランニングは今も続けています。週3回を目安として、1回に10キロ走る。健康管理のためでもあるけど、走り終えたときの達成感が支えになっているかな。レースに出るわけでもないから、目標タイムも決めていなくて、最近はめちゃくちゃ遅いですよ。普段はひとりでも走りますが、週に1日だけはいつものメンバーで一緒に走るというのを、もう18年も続けています(笑)。

アトリエの近くでは海沿いの道路も走っているのですが、道幅が狭いから、どうしても、ちょっと走りにくくて。砂浜まで降りて、朝から海を見ながら走っていると、すごく贅沢な気持ちになりますけどね。あらためて、ランニングコースとしては代々木公園が最高だと思います。

Q41. お気に入りのラジオ番組やポッドキャストのチャンネル、ウェブサイトは?

ラジオはあまり聴いていないです。昔は、帰りの車の中で適当に聴いていましたけど。ポッドキャストも、特にこれといってないかな。

ウェブサイトでよく見るのは、やっぱりYouTube。音楽系はもちろん、建築系もよく見るし、お笑い系だったら、ナイツの塙のチャンネル(「ナイツ塙会長の自由時間」)とか。なかでも、『さや侍』で主役を演じた野見(隆明)さんが中華料理を作るシリーズは、めちゃくちゃ面白いですよ。他にも、狩野英孝のチャンネル(「EIKO! GO!!」)で料理を作るシリーズだったり、フィレンツェ在住で食堂を営んでいるシェフのチャンネル(「Buondi Toshi」)なんかも見ていて、料理系も好きですね。とにかく、YouTubeはよく見ています。

Q42. 心地よい住空間をつくるために何を重視すべきことは?

ちょうど今、家を建てているところで、夏にようやく完成する予定です。2年くらい前から、「SMALLCLONE」という設計事務所の佐々木(一也)くんと一緒にずっと進めてきたんだけど、自分たちが住む建物や空間をデザインするのは初めての経験で、こんなに楽しいことはないというくらい、本当に楽しい。

ーー特に何にこだわりましたか?

何を重視しているかといえば、もう、全部ですね(笑)。海から近いロケーションで、はるか先には富士山も見えるので、たとえば、お風呂に浸かったときにも、窓からその景観を楽しめるような設計にするとか。
逆に、細かいところでいうと、部屋の中にあるスイッチひとつ、コンセントひとつでも、印象が大きく変わってくるから、そうしたパーツまで、もちろん作り込んでいます。費用も時間も相当かかることなので、限界も見えてくるけれど、ベストなものになるようにやりきります。

Q43. 日常的に使っている香水やルームフレグランスは?

〈ディプティック〉のイチジクの香りのスキンケア(「PHILOSYKOS フレグランス ローション」)をずっと使い続けています。

僕は毎朝、亡くなったおばあちゃんにお線香をあげるのですが、そのときには〈薫玉堂〉のものを使っています。とても落ち着く、伽羅の香りです。〈松栄堂〉の「芳輪 堀川」というお香は、ほのかに甘い香りで、これもよく焚いています。どちらも京都のものですね。

Q44. 起床してすぐやることや朝のルーティンは?

朝起きて走りにいく場合は、帰ってきたら、お風呂をためて浸かってから、朝ごはんを作る。走らない場合は、腕立て伏せや腹筋といった自重トレーニングを行います。犬の散歩などもあるし、朝はやることが多くて、とにかく忙しい。

6時前くらいに起きて、いろいろやり終えてから、会社に着くのが10時半くらいかな。朝を重視した生活サイクルになっているので、夜はすぐ寝ちゃいます(笑)。

Q45. コーヒーやお茶をおいしく飲むための秘訣はありますか?

コーヒーは自分の家では淹れないので、会社に着いてから、近くで買って飲むことが多いです。

お茶はいろいろ飲みますけど、特にミントティー、それもモロッカンミントティーが好きです。モロッカンミントティーを淹れるときには、最初に茶葉をお湯で洗ったり、何分か蒸らしてから、お茶をいったんグラスに注いで、そのお茶をまたポットに戻して撹拌したりする。そういう独特の手順があって、淹れる行為そのものも好きです。

それと抹茶ですね。自分で薄茶を点てて飲んでいます。そのときは、河井寛次郎の器を使っています。紅茶を淹れるときには、〈スティーブ・ハリソン〉のポットと茶漉しとマグカップを使う。ミントティーだったら、ピューターのポットを使う。どこかセレモニー的な部分も含めて、ティータイムを楽しんでいます。

Q46. 愛用しているペンとノートは?

ノートは〈UNDERCOVER〉で作っているオリジナルのもの。デザインノートとして、これを何冊も使い続けています。

デザイン画を描くときにはシャーペンを使っていて、〈ロットリング〉の0.5ミリ(「Tikky Ⅱ」)ですね。消しゴムは、〈MONO〉の普通の四角いものか、〈ステッドラー〉のペン型でスライド式のもの(「マルス プラスチック」)のほうがよく使っているかな。デザイン画はずっとこのセットで描いています。

Q47. 寝る前のルーティンはある?

本を読んだり、映画やドラマを観たり、そんなところです。夜は本当に出かけていなくて、お酒に関しても、家でたまに日本酒を飲むくらい。おちょこで晩酌をするのは好きです。

Q48. 始めてよかった習慣、またはやめてよかった習慣は?

始めてよかったのは、なんといってもランニング。やめてよかったのは、タバコです。電子タバコを吸っていて、これまでに何回かやめようとしたんだけど、昨年、完全にやめました。昔は、会社でもタバコを吸いながら打ち合わせなんかしてたけど、今じゃ考えられないな(笑)。お酒もほとんどやめているようなものですね。

Q49. 仕事とは関係のない趣味や娯楽はありますか?

油絵を描くことかな。趣味と仕事の間みたいになっているけど、描くときには、1日に10時間くらいは平気で描き続けている。食事をするのも忘れるくらい、描くことに集中することがあります。

ただ楽しいというよりも、描きながら、この絵はこれからどうなるんだろうとか、もしかしたら失敗したかなとか、不安になってくることがあって。それでもしばらく描き続けていると、少しずつ形になってきて、なんとかなりそうかな、というところまでたどり着くと、さらに描く時間が延びていくという感じです。

僕はせっかちなので、どうしても早く描き終えたいという気持ちがどこかにあるけれど、実際にはそうはいかなくて。そこにも闘いがある。少しずつ上達しているとしても、そのせいで思い切って描けなくなることもあるし、そこを飛び越えるにはどうすればいいんだろう、と考えたりもします。

ーー画材に油絵具を選んだのはなぜですか?

油絵はやっぱり、自由が利くというか。上塗りができたり、色をキャンバス上で混ぜることもできるので、思いもよらない結果につながることが多い。そういうコントロールも含めて、絵の中でもとりわけ難しいだけに、トライしてみたくなります。

それをものにできたときの自己満足を、求めているところもあるのかもしれない。リアルにも、アブストラクトにも、どちらにも振り切って描くことができる表現方法であることも、僕にとっては面白いですね。

Q50. シティボーイとは、どのような人のことだと思いますか?

余裕のある立ち居振る舞いをしている人。思い浮かんだのは、(西山)徹とか(水谷)太郎でした。どこかエレガントで、ガツガツしていない。ジェントルマンなんだけど、それぞれに持ち味みたいなものが確かにある。そんな感じの人なのかなと思います。

だから、僕にはまったく当てはまらない(笑)。自分はシティボーイでもなんでもなくて、むしろ、田舎もんでいたい。そんな気持ちもどこかにあります。

2026年6月18日

interview & text: Yasuyuki Takase

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