カルチャー

【#2】「余白」のアレ?駅

2022年2月18日

皆さんこんにちは!シンガーソングライターの関口スグヤです。

先週のコラムを読んでいただいた方はもうお分かりだと思いますが、今回もとっておきの『アレ?駅』を紹介していきます。

『アレ?駅』というのは僕が勝手につくった造語で、思わず「アレ?」と感じる地味な駅のことを指します。私たちは普段から駅を”移動手段”として利用していますが、一方で目的地までに通過する”駅”のことをどれくらい知っているでしょうか?

僕は電車に乗ると必ず通過駅を気にしてしまうのですが、とりわけ見つけると嬉しいのが「地味な駅」です。この連載では僕のオススメの駅をご紹介して、その魅力を事細かに熱弁していきたいと思います。(この話について詳しく知りたい方はぜひ#1を読んでみてください)

第2回目にご紹介するのは、東京都北区にある『尾久駅』です。

・・・と言われてピンと来る方も少ないと思いますが、北の玄関口・上野駅のお隣にあります。

上野の隣といえば、山手線の「日暮里」や「御徒町」なんかが頭に浮かぶ人も多いと思いますが、今回注目する「尾久」は、山手線のすぐ横を走っている宇都宮線の停車駅であり、日常生活でこの路線を利用しない人にとっては、あまり耳馴染みのない名前かもしれません。

まず降りた瞬間に、駅からまったく”街並み”が見えないことに驚きます。プラットホームの目の前にはJRの大きな車庫(尾久車両センター)の景色が広がっており、まるで寝過ごして車庫に来てしまったような錯覚に陥ってしまう。しかも人の姿があまり見られないので、一人でホームに佇んでいると妙な虚無感がこみ上げてきます。夜中にここで電車を待っていたらかなり心細いかもしれない。

そして”アレ?ポイント”として最も評価したいのは「おく」というネーミング。駅以前に、名前から”謙虚さ”が滲み出ちゃっていて、その引っ込み思案な感じがたまらなく良い。

あと、唯一ポップだった駅の公衆トイレもナイスデザイン。

※Wikipediaより

巨大ターミナルである上野からたった1駅にも関わらず、その賑わいを全く断じており、ここが東京23区だということが信じられないくらい閑散としている。だが、そこが良いのである。シンプルさこそがこの街の風情でもあり、改めて私達がいかに情報過多な環境に暮らしているかを思い知らされる。

とくべつ何かがあるワケではないけど、その”余白”が妙に落ち着くのです。煌びやかな都会の影にかくれて「自分が良ければいいんだ」と己のスタイルを貫き続けるその姿はなかなかカッコいい。

そんなパンクなアレ?駅、ぜひ一度訪れてみてほしいです。

プロフィール

関口スグヤ

せきぐちすぐや|2003年、東京都生まれ。2022年よりKEEPONから本名・関口スグヤとなって始動。5歳の時に出会ったギターをはじめ、ピアノ、ドラムなどを弾きこなすマルチプレイヤー・シンガーソングライター。自宅での多重録音で楽曲制作を行っており、自身のレーベルから計4枚のアルバムを発表。次世代の12組が選ばれた大滝詠一のカバーアルバムに最年少で起用される。15歳のときに手掛けたひとり多重録音の細野晴臣カバー曲を、細野晴臣自身や久保田麻琴がミックスで応援参加。最新曲「アフター・ザ・ボール」がサブスクリプションで配信中。