
工場見学に行くと、同じ製品がスピーディーに量産されていく様をみることができる。ベルトコンベアがただ流れる姿はどこか不思議で、ずっと見ていられる。しかしふと気づくと、自分たちの日常もありふれていて量産的で、起きて寝るという生活そのものが反復のなかにあるような気がしてくる。光藤さんの作品は一般的なペンと定規を用いて紙に線を引くという反復作業により成り立っている。あえて同じことを繰り返すことで、そこには自らの意識や記憶を超えた線が引かれている。その線は太かったり、ずれていたり、一本として同じものはない。量産され、意思すら消えた反復される行為のなかにも、個が存在するのだ。そう、あたりまえだけど我々は工業製品ではなく、人間だから。「行間」と名付けられたこの展示は、そんな風に自分を肯定してくれているような気がする。
会場:msb gallery
会期:2022年10月6日(木)〜10月16日(日)
時間:12:00〜19:00(最終日17:00まで)
休み:月曜日
料金:無料