『逃げた女』ホン・サンス(監)

これまで夫とは片時も離れたことがなかった女が、彼の留守中に三人の友人を訪ねて旧交を温める。女は誰かに会うたびに、「夫が言うの。愛する2人は一緒にいなきゃ駄目だって」と同じ説明を繰り返すのだが、あんまり繰り返すものだから、逆に何かあったのかなぁと思ったりもする。もちろん、説明はないんだけど。それだけと言えば、それだけの物語。なのに、「あー、映画を観たなぁ」と思えるのは、まるで蜜を求めて羽ばたく蜂のような軌跡を描くカメラワークのせいか? 6月11日より全国順次公開。
『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』

佐久間文子(著)
博覧強記、生き字引、碩学の徒。そんな表現を体現した坪内祐三さんが、亡くなって1年以上が過ぎた。こちらは坪内さんの妻である著者が、彼との記録を赤裸々に綴った1冊。いろいろとのっぴきならなかったらしい日々の中から鮮やかに浮かび上がってくるのは、「怒りっぽくて優しく、強情で気弱で、面倒だけど面白い」という坪内さんの生きざま。うーん、とても素敵な読後感。¥1,870/新潮社
ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展「ストーリーはいつも不完全……」「色を想像する」@ 東京オペラシティ アートギャラリー

イギリスを拠点に活動し、国際的な注目を集めるライアン・ガンダーが手掛ける『東京オペラシティアートギャラリー』での収蔵品展。収蔵品は故寺田小太郎氏によるプライベート・アイ・コレクションであり、ガンダー×寺田小太郎の一対一の会話といえる展覧会。