POPEYE Web編集部の日常ブログ。
2023年 9月
2023.09.13(Wed)
POPEYE Web編集部の、ゆったりブログ。
– スタッフが見たもの、食べたもの、買ったもの etc をたまに更新します。 –
そうきたか Vol.01
いろんな褒め言葉があるなか、まぁまぁ褒め指数が高いのではないかと思っているワードのひとつが「そうきたか」。
普段使いしている人はあんまり見たことがないけれど、例えば自分がなにかアイディアを出して、相手が「そうきたか」の顔になっているときは、正直嬉しくてしょうがない。
そんなマジカルワードなのでどんどん使っていこうという話。今月の「そうきたか」は、荏原町のフランス菓子店『Patisserie YOSHIKAWA』のサブレ。ライフワークとしてサブレを見かけたら買うようにしていて、ちょっとしたサブレではあまり驚かなくなってきた近頃、その油断をサクッと壊されたました。

ポイントは、じゃがりこを彷彿とさせるこの形状。サブレにしては小さいので一個では絶対にヤメラレナイ。そのうち何個食べたかわからなくなり「いくとこまでいてまえ」スイッチがオン、「適度に」という理性が壊れるちょうどいい質量なのだ。ちょっぴりしょっぱい中毒性のある味も要因のひとつだけど、形を変えるだけでこれだけサブレで楽しませてくれるなんて、というエピソードでした。
あと、テレビでバスケW杯を見たら、バスケのパスとかシュートって「そうきたか」の連続ってことにも気が付きました。
2023年9月
宮本(POPEYE Webエディトリアルディレクター)
正ちゃん帽。
トロ松さんがかぶっていて可愛いなと思っていた「正ちゃん帽」。古い新聞4コマ漫画『正チャンの冒険』に登場するキャラクターがかぶっていたことから付けられた名前で、大きく言うと“ポンポン付きのニット帽”のこと。
トロ松さん以外でこの帽子を推している人に出会っていなかったけれど、先日コペンハーゲンで気になっているお店〈HOLLY GOLIGHTLY〉のインスタグラムを見ていたら、正ちゃん帽のスタイルがすごく多い!
秋冬身につけたいアイテムです。
2023年9月
町田(ライター)
タイガー。
ここ数年、夏に履けるグレーの薄い生地のスラックスを探し続けています。理想の色合いはかつてアメアパで売られていたけれど、もうどこにも売っていません。紳士服売り場や古着屋で探しても、そもそもグレーの薄手のスラックスはあまり需要がないようでコレ! という一本になかなか出会えません。
そんなあるとき、意外な場所で発見。

それはタイガー・ウッズのゴルフ教本。
タイガーのスイングがコマ送り写真で撮影されているゴルファーに寄り添った一冊ですが、あるページでタイガーが履いているスラックスがとってもイイ。
↓

淡いグレーとテロテロの生地がとても素敵。結局、これを買えるわけではないけれど、ちょっとずつ理想のグレースラックスに近づいている気がしています。あと、教本のおまけページ的なコーナーでタイガーが着ていたスーツの様子も良くて今度はスーツも欲しくなりました。

という、探し物は意外なところで見つかったりするという体験談。からの告知ですが、もしかしたらあなたの探し物が見つかるかもしれないバザーを自由が丘のひかり街で本日18時まで開催中! ぜひ来てください!
2023年8月
宮本(POPEYE Webエディトリアルディレクター)
僕のバイブル。
教科書としているお店がある。神戸(正確には芦屋の隣駅にある夙川というエリア)にかつてあった「ピアスポーツ」というサーフショップだ。

僕はここで扱われていたサーフボードや、スケートボードメーカー、ウェアをもう何年も探し集め続けていて、東の海でひとり、西のピアスポーツスタイルを勝手に演じきっている。どやさ。

生まれた頃にはもう無くて当然一回も行けてないけど、1977年のポパイで“関東でもめったに見かけないものばかり”と紹介されていて、そのセンスはお墨付き。復活を熱望すること何年になるか、実は最近このお店のウェブサイトが立ち上がっているのを発見し、当時の内装をまじまじと見ることができるようになった。
いずれは実店舗の復活を! とまでは言わないので、ロゴTシャツの復刻を望みます。ポケロゴでバックプリント無しなら10枚買います。
2023年8月
トロ松(編集者/ライター)
街の名コピー。
商店の看板や路上の掲示板に書かれたフレーズを「街の名コピー」と呼んで、遭遇したら撮るようにしている。といきなり言われても「?」だと思うので、少し実例を。
店のキャラクターや場所との関係性込みで言葉の強さが倍増するのが街の名コピーの特徴だ。店主が考えたのか、親戚の作文が得意な子が考えたのか、常連客がプレゼントしたのか、有名なコピーのパロディなのか、など想像するのも楽しみのひとつ。
ただ、世間に広めるためではなく、その土地に暮らす人やフラッと訪れた人に向けたコピーなので探すのが難しい。というか、厳密に言うと探してはいけない。道を歩いているときに偶然目に入ってくるのが街の名コピーとの理想の出会い方。
だから、なかなか見つけるのが難しい。
ということで、後日「でかい遺産」と同じ方式で読者のみなさんに募集をしたいと思っています。
2023年7月
宮本(POPEYE Webエディトリアルディレクター)
決め手はカーペット。

ないんです。最近。TVK(テレビ神奈川)なんかでたまにやっている懐かしいドラマに映るあれ。かつてはよく見かけていたのに。探しているのはなんてことないグレーのカーペットの部屋。僕が住む借家を選んだ決め手は、階段にこれが使われていたからでした。気付くと東京の住宅ではなかなか出合えなくなっていて、もうホテルに頼るしかなくなっています。写真はファミリーロッジ旅籠屋。ここはかなり僕の好きなイメージに近い。旅先で旅籠屋さんがあれば懐かしのアメリカンに浸ります。いずれこんな部屋がほしいです。
2023年7月
トロ松(編集者/ライター)
アフターアワーズ・クラブ 第2話:東京五十音散策編

こんにちは! POPEYE Webライターの内田です。ブログ内限定のミニポッドキャスト「アフターアワーズ・クラブ」、今回もヤングチーム3人で配信します!

同じくライターの町田です! 今回は3人が関わっている記事『東京五十音散策』について話してみました。

同じくライターの宇都です! あまりの暑さにちょっとだけテンションがおかしいかもしれませんが、ぜひ聴いてもらえると嬉しいです。
※視聴は以下から。↓↓
関連記事:東京五十音散策
https://popeyemagazine.jp/tag/tokyo-walking/
2023年7月
内田(ライター)、町田(ライター)、宇都(ライター)
前屈の記録 #3

2023年6月
白石(POPEYE Webデザイナー)
The Sweetfish Cakes
毎年、この時期になると出てくる「若鮎」が好き! と言っても本物の鮎ではなくて。誰もが一度くらいは見たことがあるであろう、アノ鮎の形をしたKAWAIIお菓子である。
餅粉や水飴などで作った「求肥」をカステラ生地で包み、川鮎の姿に見立てて目、エラ、尾びれなどを焼ゴテで焼印したもの。「稚鮎」や「登り鮎」、あるいは単に「鮎菓子」と呼ばれることもある。多数の製造メーカーで作られていて、関東では求肥に餡が混ざったものも少なくないけど、やっぱり求肥のみが潔くて良い。
歴史を調べてみたところ、やはり清流の多い鮎の本場として知られる岐阜県、あるいは京都が発祥の地だとか。岐阜市湊町にある1908年創業の老舗「玉井屋本舗」創業者・玉井経太郎氏が、京都などで修行を積んだ後、鮎菓子を始めたという。その原型となったのは岡山の銘菓「調布」という菓子らしい。食べたい。
で、とにかくこの若鮎がイイのは、「求肥とカステラ」という一年中を通して調達可能かつ特に季節感の感じられない素材を使用していながら、この初夏の時期にしかほとんど販売されないということだ! 特定の行事イベントと結びついた柏餅やらクリスマスケーキとは違う、微妙な風流感がある。
だいたい5月中旬から市場に出回り、もうそろそろ消えようとしている。短い。だがそこがいい。
2023年6月
井出(編集者/POPEYE Webシニアエディター)
Small resistance #1
「ちいさい秋みつけた」と同じようなテンションで「ちいさい反抗みつけた」と思う瞬間がある話。

写真はとあるフランチャイズガソリンスタンドの待合室。
自分が知る限り15年以上の間に何度か経営母体が変わり、それにともなって看板やスタッフの制服も新しくなっている。にもかかわらず、待合室にあるジョアン・ミロの絵はずっと変わっていない。他にも巨大な金魚を飼育している水槽、トレンディドラマにでてきそうな机と椅子、瓶コーラの自販機もずっと置かれている。
個性を出しすぎたら注意を受けるところを、会社側が怒りようのないor意識できない部分で店長(オーナー?)が静かに自分の趣味嗜好を貫いていると解釈していて、訪れる度に「いいね!」と感心している。※妄想です
小野寺伝助さんの連載『クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書』に「人間らしくいること」で非人間化に抗うパンク的な姿勢を垣間見たという一文があったけれど、真相はさておき、自分はこのガソリンスタンドの店長(オーナー?)にも同じ姿勢を感じているのかも。
このように、会社、先生、上司、先輩などに感知されない程度に個性を出したり、既存のルールに反抗したり、自分らしさを出すことを「Small resistance」と名付けて、今後このブログで応援していこうと思っています!
2023年6月
宮本(POPEYE Webエディトリアルディレクター)
神田にて。
先日、「神保町ブックフリマ」に行ってきました。本を出版している場所・出版している人自身から直接買える機会は珍しく、フリマならではの雰囲気でとても楽しかったです。到着してすぐにずっと欲しかった『金枝篇―呪術と宗教の研究』シリーズ(国書刊行会、現在7巻まで発売中)が半額以下になっているのを見つけ、大興奮でレジへ。
『金枝篇』は社会人類学者ジェームズ・フレイザーによる大著。ウェブのミニコラムコーナー、「タウントーク」に登場してくださった後藤護さんがこれから出る予定の続巻の訳文校正を担当しているそうで、発売が待ちきれないです。そのうちポパイウェブでもバザーみたいなものがやれたらいいなーと考えつつ、その帰り道には4年ぶりに開催された神田祭に遭遇!
盛り上がっていても、汗だくで大変でも、信号を守って進んでいくお神輿をみて、自分も仕事で守れる最低限のことは守らなきゃなと勝手に解釈し、浮かれた気持ちが引き締まりました。まずはスケジュールを守るところから。さあ、今月からやってみせるぞ!
2023年6月
内田(ライター)
前屈の記録 #2

2023年6月
白石(POPEYE Webデザイナー)
リサーチ。
はじめまして、新人ライターの宇都と申します。ここ数ヶ月は、ライターのキホンのキ、リサーチ業に奮闘中です。
今年の5月でポパイウェブに関わり始めてちょうど一年が経ったこともあり、身の回りの何かを新調したい気分になりまして、修行中のリサーチを駆使し、今欲しい「レコードバッグ」を調査してみました。といっても、とても身近な……先輩たちの(レコードが入りそうな)布バックを。
布バッグ、当たり前のモノすぎて普段は全然気にしていなかったのですが、よーく見てみると、持ち手の長さや布地の厚みが違うだけでなく、持ち主のスタイルが如実に表れることを知りました。通い慣れた街でもじっくり観察すれば、記事の質が上がってくるに違いない! 今日もリサーチ頑張ろう。
2023年5月
宇都(ライター)
西のヒットナンバー。
最近、編集部内で「みんなにとっては当たり前のことでも自分は経験していないものってあるよね」という話しになりました。自分の場合は音楽共有サイトがそれだけど、過去にSoundCloudに一回だけ音源をアップしたことがあるのを思い出し、検索してみると発見。蒐集していた当時のディスコの録音テープ(DJプレイ中に録音されたもの)の一つをアップロードしていました。ニール・セダカの“関西ディスコヒットナンバー”から始まる1980年のMIX TAPEは、改めて聴くとDJの選曲も喋りも秀逸! でも何より、そんな“西の音楽”の仕掛けに大阪の音楽店「The Melody」が絡んでいたりしたことを取材を通して知り、馴染みの曲が一味違って聴こえたのが最高の体験でした。
関連記事:終わりなきウエストコーストロード
【前編】https://popeyemagazine.jp/post-118267/
【後編】https://popeyemagazine.jp/post-118395/
2023年5月
トロ松(編集者/ライター)
私的二択シリーズ。
はじめまして。ライターの町田です。『今月はこんなお店に行ってきた』という、ニューオープンや新メニューを出した老舗など、気になる飲食店を紹介する連載を担当しています。
POPEYE Webのほとんどの記事にはハッシュタグ(←クリックしてみて!)が付いていて、この膨大なタグの中に「二択シリーズ」という隠れ企画が存在するのですが、私が二択で迷っているのはパイかサンセットか。昨年取材した『Punk Doily』というパイショップには、東京一といっても過言ではないテラス席があり、日没の時間帯がそれはもう最高なのですが、遅めに行くとパイが売り切れるという恐るべき事態の可能性も。確実にパイをゲットするか、夕陽を見るか、どちらを選ぶかはあなた次第です……!

関連記事:今月はこんなお店に行ってきた。(九品仏『Punk Doily』編)
https://popeyemagazine.jp/post-145408/
2023年5月
町田(ライター)
ジョシュアツリーの法則。
POPEYE Webに掲載しているシュロという木をテーマにした漫画を読んで以来、散歩をしているとシュロがビシバシ視界に入ってきて大変。

だいたい上の写真のような5,6mのかわいいサイズの木だけど、近所の交差点で桁違いのヤツを発見。しかも3本。

なにがすごいって、この大きさよりも何千回も通っていた道なのに「シュロ」という言葉を知るまでまったく気にしていなかったこと。さらに驚いたのは、この現象に「ジョシュアツリーの法則」という名前がついていたこと。あるデザイナーが図書館を訪れ、そのときに読んだ本でジョシュアツリーという木の存在を知り、いつもの帰り道に“それ”があったことに気がついたことから「名前を知ることによって認識できる」現象をそう名付けたらしいが、まったく自分と同じゃないか。シュロに変わるなにかを探して、みなさんに認識してもらうことを目標に散歩を続けたいと思います。
2023年5月
宮本(POPEYE Webエディトリアルディレクター)
YouTubeライブ配信
埼玉県狭山市で17年ぶりに開催された『ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル』を記念し、POPEYE Webでは関口スグヤさんと麻田浩さんをお迎えしてミュージックライブを配信しました! アーカイブされていますので、未視聴の方はぜひ!
記事はこちら。
https://popeyemagazine.jp/post-158190/
映像はこちら。
https://www.instagram.com/reel/CqeAqzkAwBI/
このライブ配信ですが、そこはやっぱりポパイウェブ。「自分たちでやってみる!」ということで業者の方には頼まず一から自分たちで準備してみました。僕はスイッチャー(画面の切り替え)と動画配信の管理など、映像まわりの諸々を担当しました。トラブルがないよう何度も機材リハーサルを重ねました。

いざ生配信がはじまると予期せぬ機材トラブルが相次いで起こり、汗びっしょり……! 演奏は本当に最高でとってもいい時間だったのですが、僕らが演者の方や見ている人に迷惑をかけたのではないかと大反省。後ほどプロの方に聞いたところ、生配信は絶対といっていいほどトラブルがつきものだそう。やはり、経験してみないとわからないことだらけだ。
ポパイウェブで仕事をするうちに、ポッドキャストの収録では「音声担当」、映像関係のことでは「映像編集担当」。「画像の編集します」「音源作成を担当します」などなど、怪人二十面相さながら役職を変えて挨拶をしています(笑)
ウェブ媒体でやれることは多い。ライターではあるけれど、その枠を超えて挑戦していければもっと面白いことがやれるし、届けられるかもしれない。今年もさらに色んなことに挑戦していきますので見守っていてください!
2023年5月
内田(ライター)

求む、見えないDJブースがある箱。
最近レコード本を出版した経緯からDJブースに立つ機会が増えたが、とっても恥ずかしく思うときがある。なぜDJブースはあんなに目を引くように作られているのだろう。かつてのDJブース(ディスコ初期の頃)はリクエストカードを渡す穴があるだけで、DJの顔なんて見えなかったという話しを聞いたことがある。’70年代後期に六本木にあったディスコ『T.G.I FRIDAYS』はDJルームがマジックミラーで隠されていたらしい。写真は僕の大阪の師匠の一人、DJデニスさんが在籍していた『葡萄屋』のDJブース。鉄格子が加わるだけでもちょっと控え目に見えるよね。みんながDJブースのほうを向いてノッている、というあの光景より、みんな各々好き勝手な方向を向いて踊っている箱があればいいのにな。
2023年4月
トロ松(編集者/ライター)
ブログ内限定のポッドキャスト「アフターアワーズ・クラブ」始動!/第1話:自己紹介編

こんにちは。ポパイウェブ・ライターの内田です。
いやー、今日もお仕事頑張りましたね! こんな日はウェブのヤングチームの仲間、町田さんと宇都くんの3人で乾杯といきたいところだけれど、「それもコンテンツにしてみれば?」とクリエイティブディレクター・コクブさんの声が!
ということで仕事終わりの、いや、放課後の雑談のように喋るミニポッドキャスト『アフターアワーズ・クラブ』をスタートさせてみました!

同じくライターの町田です。説明ありがとう(笑) ウェブのポッドキャスト番組『POP-EYE MEETING 編集会議』のスピンオフみたいにして続けられたらいいね。

同じくライターの宇都です。初回はみんながウェブでどんなことをやっているのか、自己紹介も兼ねて喋りました。楽しんで聴いてもらえたら嬉しいです! それではよろしくお願いいたします。
※視聴は以下から。↓↓
2023年4月
内田(ライター)、町田(ライター)、宇都(ライター)

取り残された話。
フッと目が覚めて、ボンヤリした頭をそろりと上げると……電車の中だった。いつも見慣れた、地下鉄日比谷線。の車両。のはず。だったのだけれど、ハテ、何かが違う。アレ? この電車止まってる? しかも明るい、地下じゃないぞ。窓の外には他にも停車した列車が……おお? よく見たら誰も人がいない? この電車、僕一人だけ? 何コレ???
……どうやらここは、停車中の無人列車。真っ昼間の。要するに僕は、東銀座駅から乗り込んで中目黒方面へと向かっていた途中で眠りこけ、降り過ごして、一人車両に取り残されてしまったようなのだ。普通、終点の駅で車掌さんが起こしてくれるよね? いやはや、どれくらいの時間寝ていたのか。てか、ここは一体どこなのか。そんでワタクシどうすれば? すっかりボーゼン自失、だらしなく口を開けて窓の景色を眺めていること数分。カツ、カツ、カツと、前方の車両の奥から車掌さんらしき男性がゆっくりとこちらに向かって歩いて来るじゃないか。スリーナインかいな。僕の目の前で足を止めた彼は、「またか」とでもいうような心底面倒くさそうな顔をして、「そのまま待っててください。折り返しますから」とだけ言い残し、次の車両へと足早に去っていった。
言われたとおり待っていたら、10分後くらいだろうか、列車が(反対方向に)再び動き出した……と思ったら、ものの30秒ほどで駅に到着。遠くまで漂流したのかと思ってたが、こんな近くにいたとは。辿り着いたのは中目黒駅だった。日比谷線・北千住方面行き、当駅発。ホームには人がたくさん並んでる。当駅発なのになぜか一人だけすでに乗客が乗っているという謎の状況、窓越しに皆が目を丸くしてこちらを凝視しているのが恥ずかしい……。
帰ってから調べたところ、僕が取り残されていた場所は、日比谷線・中目黒駅から祐天寺駅方面へと少し進んだところにある「引き上げ線」(列車の方向転換や入れ換えを行うために、一時的に本線から列車を引き上げるための側線)というやつだったらしい。電車ファンの方々には“常識”なのかもしれないけど、20年近くもこの線を利用している僕は、何度も通っていながらまったくその存在を意識したことがなかった。見ているようで見ていないんだなあ。それにしても、あの誰もいない列車の雰囲気は何だかとても良かった。
2023年4月
井出(編集者/POPEYE Webシニアエディター)
前屈の記録 #1

2023年4月
白石(POPEYE Webデザイナー)

Quilting Bee
学生時代にこんな部活あったら入りたかったなー、と妄想することがたまにあるのですが、昔のポパイを読んでいると先輩たちも似たようなことを考えていたのか、編集スタッフらがクラブ活動みたいなことを結構やってたみたいなんですよね。おそらく稼働はそれほど……な感じだったとは思うけど。さておき、僕も作りたいなと思って。例えば「Quilting Bee(キルトをつくる会)」とか。ルビア(茜)の根を主原料とした赤色合成染料、通称ターキーレッドの普及がきっかけで、この赤と白で構成されたキルトの最盛期は1880~1920年代頃とされてるのですが、その時期の紅白キルトを(たぶん)世界一所有していた方がいて、ジョアンナ・S・ローズさんという方なのですが、自身のキルトコレクションをニューヨークの「American Folk Art Museum」に653枚展示/寄贈された偉大な方で。そのコレクション展「Infinite Variety」の本が最近復刻されまして、TOROの山口さんに教えていただいたのですが、もう、もう、本当に圧巻で、その『Red and White Quilts: Infinite Variety: Presented by The American Folk Art Museum』を読んでいると、ちょいちょい「Quilting Bee」の話も出てきたりして、本日はそれについて調べてたら一日終わりました。プシュッ。まあクラブ活動というか、POPEYE Webから派生するいくつかのコミュニティスペースみたいなものをウェブサイト上に作ってみるのは楽しそうかなって思ったって話です。それはそうと、僕が持ってるこのキルトも当時ローズさんの手元にあったら「American Folk Art Museum」に所蔵されていたと思うと背筋が伸びるなあ、大切にしよう。
2023年4月
国分(POPEYE Webクリエイティブディレクター)