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彼はそれをサンバーンファニチャーと名付けた。

日焼けを良かれとした家具店

2022年6月10日

photo: Keisuke Fukamizu
text: toromatsu

“LAやサンフランシスコのようなオーシャンサイドの匂いがするインテリア”と聞くと、ついデニム地のソファや、サーフィンモチーフのクッション、GO BEACHなどと書いたメッセージ雑貨なんかを浮かべてしまう人も少なくないと思うが、ああいったものは俗に言う西海岸風であって、本当のウエストコーストとは正直かなりかけ離れているように思える。

 何事も比較するのは良いことではないが、横浜や鎌倉・七里ガ浜で家具店『ザ・ヌーン』を営む望月 亮さんが集めるファニチャーは、それらと違ってひとつひとつがどれもサーフィン然としていないのに、驚くほど海の匂いが漂ってくる。

 彼は自分が収集したものを“サンバーンファニチャー”と名付けている。直訳は“日焼け家具”。高温多湿の日本ではあまり見られない景色だけど、アメリカでは家具が至って普通に外に置かれていて、グラスファイバー製のシェルチェアや、プラスチックベンチ、ナイロンやビニール素材を取り入れたビーチチェアならまだしも、ファブリックを用いたソファでさえ雨風を気にせず使うのだ。そんなリアルなシーンに目をつけた望月さんは、外に出された日焼けした家具を、海が似合う家具と捉え独自の価値を見出した。

「日焼けした家具は、まるでビーチでピンク色に日焼けした白人女性のよう。FRP、プラ、ウッド、ファブリックなどいずれも色が抜けていたりするけど、かえってそれが美しく思えます。アメリカのスリフトを回ると、ついそういうものに目がいってしまうんです」。目黒のミッドセンチュリー家具店から独立し6年前に『ザ・ヌーン』を開業したときには、店名を『サンバーンファニチャー』にしようか悩んだという。日焼け家具への思い入れが当時から相当強かったことがわかる。

『ザ・ヌーン』を営む望月 亮さん

「買い付けの合間にアメリカでサーフィンをしたりしていたから、海をコンセプトにしたいとは思っていた。でもサーフィンイメージのインテリアみたいなものには、まったく興味がありませんでした。そういうのよりはカリフォルニアで日焼けした家具のほうがよっぽど海を感じる。海沿いの街を歩いてみつけた家具だったり、フリマで出会った人の家に交渉してお邪魔させてもらったりして仕入れていきました。ちなみにサンバーンファニチャーといっても、日焼けした家具だけにフォーカスしているわけではないんです。正確には日焼けや、陽が似合う家具、というのに着目しています。マリブビーチのような色味のランプだったり、波を俯瞰でとらえたような陶器だったり“自分にとってはこう見える”というようなもののほうが重要だと思っている。もちろんそうは言っても、デザイナーズ家具に目が無かったりする自分もいるんですけど……」

 家具はもとより、ランドスケープアートを探したり、アメリカントイや、アメリカのファミリー写真が気になったり。それらすべてに、どこはかとなく海の匂いを感じて仕入れているザ・ヌーンのファニチャーや雑貨は、やっぱりいわゆる西海岸風とは違って面白い。そんな望月さん。実は曾祖父が、界隈で名の知れた京都の日本画家なのだそう(!)どうりで家具やアートを集める目線が面白いわけだ。

インフォメーション

ザ・ヌーン 横浜ストア

◯神奈川県横浜市西区浜松町7-22 ☎090-6233-7262
営業時間についてはThe NOON公式HPをご確認下さい。

Official Website
http://thenoon.tokyo/