カルチャー

BGMもいいじゃない。

Sundays Best & タイ東北 モーラム酒店

2021年7月12日

photo: Kazuharu Igarashi
text: Koji Toyoda

そう、グッドミュージックとは血眼に探さずとも、
思いがけないタイミングで出合うものなんだよ。
僕らの通うお店と、そこで見つけたグッドなBGMのプレイリスト。

Sundays Best
チカーノソウルとアメリカ雑貨。

 用はなくとも、つい立ち寄ってしまう『サンデーズベスト』。店主・横瀬裕貴さんとの話に夢中になるから気にしてなかったけど、そういえばいつもいい雰囲気の音楽が流れてるような。「BGMは、大抵チカーノソウルかな。最近はその辺のアーティストの元締めレーベル「ビッグ クラウン」ものが多いですね。その社長が率いるEl Michels Affairってファンクバンドがまたよくてさー」と、ターンテーブルにのせてくれたそれは店内に並んだ雑貨と同じく、ものすごくアメリカの匂いがした。

BGM Play List

アメリカのレーベル『NUMERO』によるコンピレーション
1. LP盤『SOUTHWEST SidE STORY VOL.19』
「チカーノ&スイートソウルのバイブル的コンピ『EAST SIDE STORY』に触発されたアメリカのレーベル『NUMERO』によるコンピレーション。本家はもちろん、こっちも最高に甘々です」
DURAND JONES & THE INDICATIONSのLP盤『AMERICAN LOVE CALL』
2. DURAND JONES & THE INDICATIONSのLP盤『AMERICAN LOVE CALL』。
「真っ当なディープソウル。ドラムを担当するアーロン・フレイザーの作品もおすすめですよ。めっちゃ歌がうまいんです」 
THEE LAKESIDERSの7インチシングル『CAN'T FOOL ME TWICE / SHOW ME LOVE』
3. 若きチカーノデュオ、THEE LAKESIDERSの7インチシングル『CAN’T FOOL ME TWICE / SHOW ME LOVE』。
「3年ぶりのシングルで、嬉しいカラー盤! 甘く、儚げなチカーノソウルが心に染みるす!」 
PAUL & THE TALL TREESの7インチシングル『THE LITTLE BIT OF SUNSHINE』
4. PAUL & THE TALL TREESの7インチシングル『THE LITTLE BIT OF SUNSHINE』。
「心に響くアメリカ産のフォークロック。2019年のアルバム『So Long』のジャケもやたらと渋くて、気になる存在」
BRAINSTORYのLP盤『BUCK』
5. サイケデリックなソウルを奏でる3人組バンド、BRAINSTORYのLP盤『BUCK』。
「新曲のPVがチーチ&チョンオマージュ。何かとセンスがいいサイケソウル」
BGMもいいじゃない。
レジ裏のターンテーブル脇にドサッと置かれたLP盤は、行くたびにその枚数が増えていってる。ちなみにチカーノものは、レーベルのオンラインショップ上で完売することが多いらしく、最近もっぱら直輸入。たまに下高井戸の『トラスムンド』にも通う。
東京都目黒区中目黒3-5-30 03·5734·1900 13:00〜18:00 水・木休

タイ東北 モーラム酒店
モーラムとイサーン地方の激辛料理。

タイ東北 モーラム酒店 外装
タイ東北 モーラム酒店 店内

 その名のとおり、BGMはモーラム。え、何それ? と思うなかれ。タイ語でモー=スペシャリスト、ラム=歌を意味する、東北部のイサーン地方に伝わる伝統音楽。本国はもちろん日本でもDJユニットSOI48のおかげで再評価が進んでいるワールドミュージックってわけだ。「BGMは、そのSOI48さんが監修。昭和チックなメロディとこぶしの効いた歌いっぷりは、演歌にも似ているからビールが進むんですよね」。それこそ東北地方の激辛料理をビールでぐいと流し込めば、そこはもうタイの屋台。モーラムは極楽浄土の音楽だ。

BGM Play List

ラビン・プータイのアルバム
1. こちらは伝説の歌手、ラビン・プータイのアルバム。甘い歌声を持ち味に、レコード屋の荷物運びから人気歌手に成り上がったDIY精神の持ち主。
カムロン・サンブンナローンのアルバム
2. 戦前ジャズやラテンをいち早く取り入れたオシャレ系として知られるカムロン・サンブンナローンのアルバム。
タオ・バンドンのアルバム
3. SOI48のレビューを読むと、世界中のレアグルーブDJに愛されるというルークトゥン歌手のタオ・バンドン。こぶしの効いた甘い声に、泥くさいバック演奏。ちなみに、ルークトゥンとは、タイの大衆歌謡のこと。その源流は1930年代までさかのぼることができ、1950年代に西洋音楽などを取り入れることで多様化。1980年代の東北部からの出稼ぎ労働者の都市部流入とともに、大衆化していったモーラムとは似て非なるもの。
アンカナーン・クンチャイのアルバム
4. 映画『バンコクナイツ』にも出演したタイの音楽史にその名を刻むアンカナーン・クンチャイ。’70年代に発売された作品はもちろん、近年の作品もおすすめだ。
サントーン・シーサイのアルバム
5. ’70年代のタイ芸能界で活躍した映画スターのサントーン・シーサイ。ラテンやロック、ディスコ音楽を果敢に取り込んだルークトゥンシンガーとしても有名だ。